14 / 30

第2話

拷問のような暴行を加えられ続け、あげくのはてには奴隷のような台詞を喋ることを強制され──皇は、自分の所業は棚上げに、諦観していた。 諦めた気持ちの中、やり場のない憤りが残滓となってちらちらと燻っている。 自分は何も悪くない。自分はただ、あの水森蘭を手に入れたくて。 「『なんで俺がこんな目に』。『俺は何も悪くないのに』。そんな顔してるな」 「!」 突然動きを止めて、信が静かに言った。 図星を突かれて息を呑んだ皇に、信は真顔で続ける。 「生徒会の予算を私欲のためにドブに捨てるような真似して、自分は何も悪くない?笑わせんな」 「ぐぶっ…!」 叱責するかのように喉に凶器を突き立てられた。 くらっときた頭に、水森の顔が浮かんだ。 俺は、だって、あいつが好きで。 手に入れたくて。 また止まった信は、皇から目をそらさずに淡白な声で続ける。 「“大好きな蘭ちゃんに転入生も惚れちまったかもしんねえ。よっしゃ、いっちょ犯して身の程わきまえさせてやるぜ。転入生も俺様に抱かれるんだ、不満はないだろ”って感じか?」 「ぐっ、ごっ…」 突き入れられる。頬を涙が伝っていった。 生理的なものなのか、感情が高ぶったことによるものなのか、皇はわからなかった。 俺が悪いのか? ……俺は、なにか間違ったのか。 「皇、お前本当はわかってんじゃねーの?」 認めない。この俺が、こんな犯罪者まがいの男の言うことなど、認めるものか。 俺が間違っているはずがない。 皇はくわえさせられている信の熱を感じながら、きつく目を閉じた。雄臭さが感覚のすべてを占めるのは嫌だったが、他に何も考えたくないと思った。

ともだちにシェアしよう!