11 / 14

※第11話 情

「なあ、蓮…もう一回いけるか?」 「うん」 「じゃあ続き、するか」 寝転がっていた僕は上半身を起こし、奏に覆いかぶさる。その様子を見ていた彼は少し微笑む。僕は汗で額に張り付いていた奏の前髪を指先で払う。彼の瞳も、涙で潤んでいた。 「……慣らした方がいいよね」 「いや、その必要はない。もう準備してきた」 奏は僕の頰にキスをするとそのまま耳元で、「挿れて」と囁いた。 彼の掠れた声のせいか、直接伝わる肌の温度のせいか分からないが、僕の性器は硬度を取り戻していた。 「初めてだから、上手くいくか分からないよ」 「ばか、俺も初めてだ」 「……力加減、出来ないかも」 「さっきも言ったろ。遠慮すんな」 奏は脚を開いた。全てを曝け出してくれた彼を見ていると、何故か涙が出そうになる。彼は緊張と興奮がごちゃ混ぜになっている僕を、優しい目で見つめていた。 奏が枕の裏から取り出したコンドームを着ける。自分でも驚くほどスムーズに出来た。 汗ばんだ手で、彼の手首をそっと掴んだ。 「…挿れるよ」 「……ああ」 喉が渇き、目がクラクラしていたが、やめるつもりは無かった。 心臓がうるさく響く。これ以上興奮したら死んでしまうかもしれないと思うほどに。 緊張して萎えてしまうかも、なんて心配は杞憂だったようだ。 僕はゆっくりと、自分のモノを当てがい、そして彼の中にいれた。奏が痛がったら直ぐに止めるつもりだったが、そんなこともなく、根元までずっぷりと入った。 「あっ…ッつ、はぁ……」 「奏、大丈夫?」 「れん、ッ動かして…」 彼は耳まで真っ赤にして、懇願するように言う。僕は挿れて直ぐに果ててしまいそうだったが、彼のためにもグッと堪えた。 僕が腰を動かすと、奏の呼吸も荒くなる。最初はゆっくりと。 次第に、温度と粘度が高まっていくのを感じた。僕らは話す暇もなく、ただ喘ぐように酸素を吸いながら、快楽に浸った。 奏はビクビクと身体を震わせながら、下半身を浮かせた。快楽から逃れようと、腰を反らす。僕は彼の腰を両手で掴んだ。力の入れ具合を間違えたら壊してしまいそうだったから、そっと。 奏の体は汗ばみ、ランプの光が当たり光っている。彼は僕の動きに合わせて、揺れた。 抑えていた声が、洩れ、溢れる。奏は胸を上下に動かしながら喘ぐ。 「アっ…あッ…ハァっ、れん、ッおれ……もうっ、げんかい……」 「ぼくも…っ」 僕らは見つめ合う。感じたこともないような快楽に溺れながら。それでも飛びそうな意識を保ち、僕は言った。 「かなで、…ッ出すよ」 「……ーーーッあ」 僕は果てた。それに続くようにして奏も。 しばらく動けなかった。抜くこともせずに、肩で息をしたまま。 しばらくそうしているとら額から流れた汗が目に入る。目がジワリと痛む。汗を振り払うために瞬きをしていると、奏は僕の手をギュッと掴んだ。 彼は小さな声で呟く。 「…きもちよかった」 「僕もだよ」 本心から出た、素直な言葉を口から洩らした。 そう返すので精一杯だった。これ以上話すと、涙が出そうだったからだ。 ようやく落ち着きを取り戻した僕は横になった。奏の手を握ったまま。 心臓の動きがいつも通りになる。僕はさっきまでしていたことを脳内で再上映していた。 「蓮、静かだな」 「…余韻に浸ってた。凄かったなあ、って」 「へへ、…俺もだ」 僕に抱きついてきた。当たり前だが、僕と奏は同じボディーソープの香りがする。 その匂いを嗅ぎながら、僕は目を閉じ、微睡みに落ちた。

ともだちにシェアしよう!