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※第11話 情
「なあ、蓮…もう一回いけるか?」
「うん」
「じゃあ続き、するか」
寝転がっていた僕は上半身を起こし、奏に覆いかぶさる。その様子を見ていた彼は少し微笑む。僕は汗で額に張り付いていた奏の前髪を指先で払う。彼の瞳も、涙で潤んでいた。
「……慣らした方がいいよね」
「いや、その必要はない。もう準備してきた」
奏は僕の頰にキスをするとそのまま耳元で、「挿れて」と囁いた。
彼の掠れた声のせいか、直接伝わる肌の温度のせいか分からないが、僕の性器は硬度を取り戻していた。
「初めてだから、上手くいくか分からないよ」
「ばか、俺も初めてだ」
「……力加減、出来ないかも」
「さっきも言ったろ。遠慮すんな」
奏は脚を開いた。全てを曝け出してくれた彼を見ていると、何故か涙が出そうになる。彼は緊張と興奮がごちゃ混ぜになっている僕を、優しい目で見つめていた。
奏が枕の裏から取り出したコンドームを着ける。自分でも驚くほどスムーズに出来た。
汗ばんだ手で、彼の手首をそっと掴んだ。
「…挿れるよ」
「……ああ」
喉が渇き、目がクラクラしていたが、やめるつもりは無かった。
心臓がうるさく響く。これ以上興奮したら死んでしまうかもしれないと思うほどに。
緊張して萎えてしまうかも、なんて心配は杞憂だったようだ。
僕はゆっくりと、自分のモノを当てがい、そして彼の中にいれた。奏が痛がったら直ぐに止めるつもりだったが、そんなこともなく、根元までずっぷりと入った。
「あっ…ッつ、はぁ……」
「奏、大丈夫?」
「れん、ッ動かして…」
彼は耳まで真っ赤にして、懇願するように言う。僕は挿れて直ぐに果ててしまいそうだったが、彼のためにもグッと堪えた。
僕が腰を動かすと、奏の呼吸も荒くなる。最初はゆっくりと。
次第に、温度と粘度が高まっていくのを感じた。僕らは話す暇もなく、ただ喘ぐように酸素を吸いながら、快楽に浸った。
奏はビクビクと身体を震わせながら、下半身を浮かせた。快楽から逃れようと、腰を反らす。僕は彼の腰を両手で掴んだ。力の入れ具合を間違えたら壊してしまいそうだったから、そっと。
奏の体は汗ばみ、ランプの光が当たり光っている。彼は僕の動きに合わせて、揺れた。
抑えていた声が、洩れ、溢れる。奏は胸を上下に動かしながら喘ぐ。
「アっ…あッ…ハァっ、れん、ッおれ……もうっ、げんかい……」
「ぼくも…っ」
僕らは見つめ合う。感じたこともないような快楽に溺れながら。それでも飛びそうな意識を保ち、僕は言った。
「かなで、…ッ出すよ」
「……ーーーッあ」
僕は果てた。それに続くようにして奏も。
しばらく動けなかった。抜くこともせずに、肩で息をしたまま。
しばらくそうしているとら額から流れた汗が目に入る。目がジワリと痛む。汗を振り払うために瞬きをしていると、奏は僕の手をギュッと掴んだ。
彼は小さな声で呟く。
「…きもちよかった」
「僕もだよ」
本心から出た、素直な言葉を口から洩らした。
そう返すので精一杯だった。これ以上話すと、涙が出そうだったからだ。
ようやく落ち着きを取り戻した僕は横になった。奏の手を握ったまま。
心臓の動きがいつも通りになる。僕はさっきまでしていたことを脳内で再上映していた。
「蓮、静かだな」
「…余韻に浸ってた。凄かったなあ、って」
「へへ、…俺もだ」
僕に抱きついてきた。当たり前だが、僕と奏は同じボディーソープの香りがする。
その匂いを嗅ぎながら、僕は目を閉じ、微睡みに落ちた。
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