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第2話

──────── ────── 「……ッ……ちょっと、待って」 「さっきからそればっかりだろ、痛くしていいって言ったのはサピルスだからな」 「だって……」 静寂の中に響く二人の荒い息遣い。 広すぎるほどの部屋に不自然に置かれたベッドの上、長い髪を乱れさせながら僕達は今夜も肌を重ねる。 それは一日の数時間だけ、魔力が弱くなる午前二時から朝方の五時までが僕達に許される時間。 その時間になると僕達は、城の別棟に位置するこの部屋に身を隠し身体を重ね合う。 「んんッ……痛ッ……」 「ほら、もっと足開いて」 「んあッあッ……」 「中、凄いな……ッ……気持ちいい?」 「……い、いいッ……だから……」 「なんだよ」 「……もっと……ッ……」 熱く激しく求められるほど、僕の心は痛く苦しくなる。 「おまえを抱けるのもあと数日だしな、思う存分楽しませてもらう」 それは、あと数日後に控えた成人の儀で正式に魔王になるこの男、ルベウスと離ればなれになってしまうから。 この魔界では成人になると妃を迎え入れ、現魔王であるルベウスの父から城を譲り受け、ルベウスが正式な魔王となる。 だから、魔族ではない僕とこうしていられるのはその日まで。 身寄りのなかった僕がルベウスに街で拾われ、サピルスという名を授けてもらい仕えるようになって数年、いつしかこういう関係になったけど、ルベウスにとって僕はただの暇つぶしでしかない。 遊びの延長線上で僕を抱き、そこに気持ちは存在しない。 それでも魔族ではない人種と身体を重ねることは許されず、もし見つかったら永遠に闇に葬られ、魔界から追放される。 だから、こうして隠れるように関係を続けてきた。 明け方、意識を手放していた僕が目を覚ますとルベウスはもういなくなっていた。 そして、またあの夢の残像に悩まされる。 『同じ星の────をもつ者が定めし運命の人。その者こそが────』 それは、光の向こう側からそう誰かが囁く夢。 なんのことか分からない言葉がずっと頭の片隅にこびりついて離れない。 いつの頃からか、ルベウスと過ごしたあとは必ずこの夢を見るようになった。 同じ星の…… 運命の人…… ダルい身体を引き摺るようにして窓辺に近付き、部屋に一つだけあるその窓から空を見上げると深いグレーな空が広がっていた。 運命の人なんているわけないじゃないか…… グレーの空はルベウスがいる隣の城をすっぽりと覆い尽くし、全てを包み込むようにそこに存在していた。

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