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彼の友達
キーンコーンと、7校時目終了のチャィムが鳴り響き、帰る準備をしていると、
「真尋、帰るぞ!」
って先輩が迎えに来た。
僕を見る、クラスの女子の視線が冷たくて、怖い・・・。
「何、ビックリしてんだ。ほら、さっさと鞄持って、リュックサック背負って・・・」
「あ、あの、先輩・・・」
戸惑う僕にはお構いなし。
お昼の時と同じように、手首を掴まれ、ぐいぐいと引っ張られた。
今度はどこに連れて行かれるのか、不安でしょうがなかった。
校門前のバス停から、駅前行きのバスに乗車して、15分後ーー。
終点で下車して、そのまま、駅に隣接する商業施設に連れて行かれた。
あまりの人の多さに、頭がくらくらしてきた。
「大丈夫か?着いたぞ」
先輩に言われ、見上げると、そこはファーストフード店だった。
「遅いぞ、真尋!」
ボックス席に、他校の制服を着用した男子生徒が2人座っていた。
「二人共、幼馴染みなんだ」
「そう・・・なんですか・・・」
「別に取って食おうなんて思ってないから、そう、びくびくすんな」
先輩に促され、二人と差し向いに座ると、カウンターに注文をしに行ってくれた。
茶髪で耳にピアスをしているのが久喜さんで、ふわふわの栗毛の髪が印象的なもう一人は、増井さん。
久喜さんにしなだれて、べたべたと甘える増井さん。
手を恋人繋ぎにし、僕の事は多分、眼中にない。
まさに二人だけの世界。
僕も、有馬さんに、べたべた甘えたいなぁ。
恋人繋ぎして、他愛のない会話をして、見つめ合って・・・。
でも、どんなに好きでも、彼は、恋人には決してなれない。
だって、真姫お姉ちゃんの旦那さまだもの・・・。
僕にとってデートでも、彼には、妻の弟と買い物に出掛けるにしか思っていないだろうし。
辛くて、すごく、苦しい恋・・・。
一生、暗闇の中を彷徨うのかな・・・。
仲睦まじい二人を見るのが辛くて、そっと目を逸らした。
「真尋、炭酸駄目だろ!?カフェオレなら飲めるか?」
目の前に、紙コップとフライドポテトが乗ったトレイが置かれた。
「そんなことまで調べたんですか?」
「まぁ、一応な・・・真尋は、驚かないんだ、そこのバカップルに。たいてい、最初はみんな驚くんだけど」
そんな事を言いながら、先輩が隣に腰を下ろして来た。
さっきは全然気が付かなかったけど、ふわっとした、優しい石鹸の匂いがした。
有馬さんと同じコロンの匂いに、何故か、胸がぎゅーと締め付けられた。
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