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大好きな彼は姉さんの旦那様

「うん、美味しい!」 「ちゃんと噛んで食べないと・・・ほら、ご飯ついてるし・・・もうしょうがないんだから・・・」 どんだけお腹空いてるんだか。 むしゃむしゃとハンバーグを頬張る彼。ご飯粒が、口許についてるのも気に留めない。 手を伸ばし、取ってあげると、子供のような無邪気な笑顔になった。 30を過ぎている彼に、かわいいって言ったら、怒られるかな? 頬杖をついて、そんな彼を眺めるうち、空席になっている隣の席にふと目がいった。 『なんでうちで、疫病神の面倒をみないといけないのよ!!』 真姫お姉ちゃんの怒り狂った声がまだ耳に残っている。 有馬さんが最初に怒った姿を見たのは、4月の始めーー。 父が真姫お姉ちゃんと年がさほど変わらない若い人と再々婚して、お前がいたら邪魔だからと、母方の祖父母に預けられた僕を、有馬さんが迎えに来てくれた。 お姉ちゃんは、最後の最後まで反対して。 『あんたの母親は、私から、母を奪い、自殺に追い込んだのよーーその報いで、今度はあんたの母親があの男に捨てられて・・・いい気味だわ』 憎悪を露にして、積もり積もった恨み辛みを吐き出した。 「真尋は無関係だ。君のお父さんを侮辱するようで悪いが、女性にだらしない君のお父さんが一番悪い。とっかえひっかえ、本当は、3度目でなく、5度目の結婚だってこと、親戚中誰もが知ってることだ。真尋に罵声を浴びせる前に、自分の父親をまず怒ったらどうなんだ⁉」 穏やかな彼が、声を震わせ、怒る姿をはじめてみた。 結局、お姉ちゃんが折れて、僕はこのうちで暮らすことになったけど、夫婦の間に深い溝が出来てしまった。 お姉ちゃんのいうとおり、僕は、疫病神なのかもしれない。

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