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彼が好き

家族という名の暗闇の中を漂っていた僕に差し伸べられた一筋の光。 それが、有馬さんだった。 『この子は、関係ない。よその子だから‼』 何故か、慌てて僕を隠そうとするお姉ちゃん。 有馬さんは、そんなお姉ちゃんを押し退け、僕を引っ張り出すと、にっこりと柔らかな笑顔で、脇の下に手を差し入れ、抱き上げてくれた。 『初めまして真尋。一人っ子だったから、ずっと、弟が欲しかったんだ。ようやく念願が叶った』 目を真ん丸くする僕に、有馬さん、何かを呟いた。彼が何を言ったか、肝心なことが思い出せない。 ただ、その直後、お姉ちゃんには、眉をひそめ、怪訝そうな顔をしていたのだけは覚えている。 それが、有馬さんとの出会い。 もう6年になる。 家族の中で嫌われっ子だった僕に、有馬さんはとても優しくしてくれた。 目茶苦茶格好いい彼に、一目惚れしたのかもしれない。 まだかな・・・もう9時だよ・・・ 時計と何度睨めっこしたか分からない。 彼はまだ帰ってこない。 ガタン。 玄関のドアが開く音がして、ぴくんと体が反応した。 待ってても、なかなかリビングに来ない彼。 いつもは真っ直ぐ飛んでくるのに・・・。 どうしたんだろ⁉ 彼を迎えに行こうと、椅子から立ち上がった時だった。 逞しい彼の腕にすっぽりと抱き締められたのは。

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