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第11話

「先輩のうちに・・・ちゃんと断ったんだよ。でも、断りきれなくて・・・ごめんさない。あっ、そうだ‼彼のお母さんがね、自宅で料理教室をしてて、美味しい煮物の作り方を教えてくれたんだよ」 「あのな真尋・・・」 「ん⁉」 「ん⁉じゃないだろ?」 彼、呆れて肩で大きく溜め息を吐いていた。 「少しは自覚してもらわないとこっちが困る」 彼の腕がすっと離れていって、長い指が、顔の輪郭をなぞり、頬に触れ、唇に触れてきた。 「有馬さん⁉」 きょとんとして見上げると、顎を掬い上げられ、彼の顔が近付いてきた。目を閉じる間もなく、唇に彼の分厚い口唇が重なってきた。 「うっーーっん‼」 思うように息継ぎが出来なくて、手足をバタつかせると、ようやく、唇を離してくれた。クラクラと目眩を覚えながら、なんとか息を吸っていると、今度は、ふわりと体が宙に浮いた。 「有馬さん‼下ろして‼」 「言っても分からない様だから、ベットの中で、じっくりと教えてやる」 「僕、何もしてない。ただ、有馬さんに、美味しいご飯食べて貰いたいから、もっと料理の腕を上げたいって思っただけだよ」 「今ので、充分満足だ。食欲は満たされても、性欲は満たされないーー式を挙げたその夜に、真姫から、俺との子供は作らない、いらないと言われた。なんの為の結婚なのか、虚しかったよ。そんなときだ、真姫に弟がいることを知った」 有馬さんは、寝室に真っ直ぐ向かった。広いベットの上に僕を下ろすと、スーツの上着を脱ぎ捨て、すぐに、覆い被さってきた。 「やぁ・・・」 恐くて体を捩らせ逃げようとしたけど、手首をがっしりと掴まれ、押さえ込まれた。 「一目見て可愛いと思った。目がくりくりしてて、柔らかそうな唇にすぐにでもキスをしたい衝動に駈られたよ。まさか、10歳のガキ相手に欲情するとはな・・・真姫に勘づかれ、お前が真尋だったらどんなにいいか。そう言ってやったんだ」 あっ‼これって、もしかして・・・。 「そうだよ。少しは思い出してくれたか?」 有馬さんの左手が、服の上からあちこち弄りはじめた。 「やぁ・・・くすぐったい・・・」 背中と脇の下と、脇腹と付け根・・・僕が弱い所ばかり、集中的に彼の手が這いずり回る。がっしりと押さえ込まれていて、逃げる事も出来ず悶え苦しんだ。 「・・・・!!」 彼の手が体の中心部分に触れた時、ぞわぞわと寒気が走った。爪先から全身が凍り付いていった。彼の事好きなのに、何で?動揺する僕を、彼は悲しそうに黙って見ていた。

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