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第21話

「学校でどんなにちやほやされても、真尋は、寂しかったんだと思うよ。自分を心底、好きになってくれる人がいなかったから。君は、真尋に会ったばかりだと思うが、真尋は、一年前の夏休みに行われた学校説明会で、君に出会っている。親の同伴がいない生徒は特に目立つからね。真尋は、一人、寂しそうにしている君に、自分の姿を重ねたんだろうな」 学園長先生の言葉は、ずしりと胸に刺さった。 そんな前から、こんな僕の事を思ってくれていたなんて。 何で、もっと早く気がつかなかったんだろう。 「君といる真尋を何度か校内で見掛けたが、母さんが言うように、あんな楽しそうな息子の顔を今まで見たことはない。友達と一緒にいる顔とは全然違う。保護者代わりの有馬さんのこと、香苗から聞いたよ。今は、辛いかも知れないが、真尋の事、どうか頼む」 学園長先生が、いきなり深々と頭を下げてきて、びっくりした。 「あ、あの‼僕、男ですし、そ、その・・・」 「私の弟が、同性婚しているんだ。海外では普通の事だ」 さらりと言われ、返す言葉がなかった。 「今どきのチャラチャラした若い娘を連れてこられるよりは、真尋ちゃんみたいな家庭的な子がいいもの。一から教えなくても、料理も出来るし」 その上、香苗さんにトドメの一言を言われてしまった。 こんな僕に、また、恋なんて出来るんだろうか⁉ 不安を抱えながら、重い足取りで先輩の部屋に向かった。 ドアを軽くノックをすると、すぐに顔を出してくれた。 「うちの家族、おっせっかい焼きが多くて、引いたろ⁉」 初めて入る先輩の部屋。 小綺麗にしてあって、壁の本棚には、参考書や、難しそうなタイトルの本ばかり並べてあった。 「真尋、その・・・」 先輩が言いにくそうに口を開いた。 何を言おうとしているか分かるから、その分、切なくなる。 「好きになって貰うまで待っているから・・・」 「先輩、あの・・・」 「俺は本気だ。真尋以外誰とも付き合う気はない。誰よりも、お前が好きだから、側にいて欲しいから、だから、どうしても、あの家から連れ出したかった。それだけだ」 先輩の大きな腕が背中に回ってきて、ぎゅっーと抱き締められた。突然の事に、吃驚しすぎて目をパチパチしていると、 「君の姉さんは、本当は、弟思いの優しい人だよーー」 にわかには信じられない事を言われ、更に、混乱したのはいうまでもない。

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