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第22話
結局お姉ちゃんの事は、上手い具合にいいはぐらかされ、何も知ることは出来なかった。
それから、数日後には、学校も夏休みに入り、あらかじめ許可を貰っていた、近所のスーパーでアルバイトを始めた。
先輩は、受験生だから、ほぼ毎日塾通い。
毎朝決まって、先輩の腕の中で目が覚める。
寝るときは別々だけど、夜中に、彼がベットに潜り込んでくる。
鼻を擽る微かな石鹸の匂いに包まれ、心地よさの中で微睡んでいると、彼の狼狽えた声が聞こえてきた。
「真尋、いつも言ってるが、そんなにくっつくかないでくれ・・・」
「先輩・・・⁉」
「非常にまずい状態になるからって、言ってるよな⁉」
「えっと・・・」
まだ、頭が半分寝てて、状況を上手く飲み込めなかった。
「たく、お前は・・・天然なのか、わざとなのか・・・」
キョトンとする僕に、彼、大きなため息をついていた。
「あんまり煽ると襲うぞ」
むくっと体を起こすと、背中に手を入れてきて、あちこち擽り始めたから、たまったもんじゃない。
「止めて‼くすぐったい‼」
身をくねくねと捩りながら、悶えていると、
「先輩‼ちょっと待って‼」
彼の手が、脇腹から下へと滑り落ちていった。
「やだ、くすぐったい‼」
なんとか逃げようと抗ったけど、力の差、体格の差は歴然としてて。
「・・・真尋・・・」
その上、熱を帯びた眼差しで見詰められてーー。
答えを出さなきゃいけないのは分かってる。
先輩の事、嫌いじゃないよ。でもまだ、僕の心の片隅には有馬さんがいる。酷いことされたけど、彼を恋しいと思う気持ちを、完全に払拭出来た訳じゃない。
己の不甲斐なさが、情けない。
先輩の人差し指が遠慮がちに伸びてきて、唇をそっと撫でられた。
「ーーキス・・・してもいいか⁉嫌ならいい」
「先輩・・・」
僕の心の内など、手に取るように簡単に分かるのだろう。
嫉妬に駆られ、ぞくっとするほどの色香を身に纏った彼は、まるで、別人の様だった。
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