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第23話

「・・・ごめん・・・何もしないから、そんなに怯えないでくれ」 ガタガタと震える僕を彼は気遣ってくれた。むくっと体を起こすと、ベットから立ち上がろうとした。 「待って・・・」 まず、自分が変わらなきゃいけない。 こんな僕を好きでいてくれる先輩に、ちゃんと言わなきゃ。 「真尋、どうした!?」 戸惑いを見せる彼の腕を掴んで、自分の方に引き寄せた。ぐいっと、精一杯背筋を伸ばし、彼の口唇に、自分の唇を押し付けた。時間にしてわずか数秒。 「たく、お前はーー」 先輩が舌打ちをしたのが聞こえた。 「言ってることと、やっていることが全然違うんだから」 先輩の腕を離そうとしたら、逆に押さえ込まれ、覆いかぶさってきた先輩の体重を受け止めきれず、そのままシーツの上に倒れ込んだ。 「先輩・・・んぁ・・・んーー」 抗う間もなく先輩の口唇に、唇を塞がれた。 「----うっ・・・ん」 絡みついてきた彼の舌に、拙いながら懸命に応じた。ピタリと隙間なく塞がれ、息が上手く吐けなくて、苦しくて、だんだん頭がぼっとしてきた。 「・・・そんなに、トロンとして・・・抑えきかなくなるだろう」 先輩がクスクスと苦笑いを浮かべながら、ようやく口唇を離してくれた。 「俺と付き合うーーそれで、いいんだな!?」 コクリと頷くと、彼の表情が一気に緩んだのが分かった。 「ありがとう真尋。絶対、幸せにするからーー」 まるで割れ物を扱うように、そっと優しく抱きしめてくれた。 有馬さんよりも、先輩のこと、一番に好きにならなきゃ。 この心地いい温もりには、偽りも嘘もない。 ありのままの彼の想いが詰まっている。 「先輩・・・」 彼の首にぎゅっとしがみついた。

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