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第27話
「たまには、あのバカップルに見せ付けるのもいいかと思って」
先輩と前に行ったことがある、ファーストフード店へ真っ直ぐ向かった。
「おぅ、ダブル真尋‼」
店に入ると、茶髪で、耳にピアスをしている男性がぶんぶんと大きく手を振っていた。
あれ⁉名前何だっけ⁉
「茶髪が、久喜。もう一人が増井。ちゃんと覚えておけ」
首を傾げたら、先輩苦笑いしていた。
「普通、彼氏の顔しか見ないって」
「そう。君、本当に、真尋と付き合ってるの⁉」
ふわふわ栗毛を指で弄りながら、増井さんが僕の方に視線を向けてきた。初めてここで会った日、ずっと下を向いていたから、顔を見る余裕なんてなかった。恐る恐る彼の顔を見上げると、くりくりした大きな双眸と目が合った。お人形さんみたいでとても可愛い。平凡な容貌の僕とは雲泥の差。
「もっと可愛い子が趣味だったよね⁉不釣り合いじゃないの⁉」
「俺がいいから、いいんだ」
「ふぅ~~ん」
増井さんは納得していないようだった。
「真尋、何か注文してこようぜ」
「あぁ」
しかも、この状況で二人きりにするなんて。
久喜さんと、カウンターに向かう先輩を、ため息吐きながら見送った。
「いつまで、突っ立てるの⁉」
「すみません」
慌てて席に腰を下ろした。じろじろと好奇の目で見られ、俯くしかなかった。
「君も真尋っていうんだよね⁉何て呼んだらいいかな⁉とりあえず、真尋くんでいいか。単刀直入に聞くけど、真尋とは、エッチしたの⁉」
「はぁ?」
「はぁ、じゃないでしょう。真尋とエッチしたか聞いてるのに」
増井さんは表情一つ変えなかった。
「僕ね、彼と付き合う前、真尋と少しだけ付き合ってたの。意地悪なところもあるけど、今彼より大事にしてくれた。だから、よりを戻したいって言ったら、恋人が出来たって言われて。誰かと思ったら・・・まさか、君だったとは。正直、真尋に失望した。君より僕の方が何倍も可愛いし、彼と体の相性も悪くないのに」
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