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第37話
夜店のおばちゃんに教えて貰った駅前の自由公園は、祭りの目玉である踊り流しを一目見ようとすごい人だかりが出来ていた。先輩たち、背が高いからすぐに見付かるだろうと思ったけど、そう甘くはなかった。地元の幼稚園児から踊りが始まり、市内の6つの高校、大学、主催の商工会、協賛の企業と、順番に踊りが披露され、その度、見物客から大きな拍手が沸き起こっていた。
携帯を何度見ても先輩からの着信がなかった。
4月からこの町に住んでいるけど、何処に何があるのか全然知らない。交番があればいいけど、それらしき建物が見つからない。
知らない町で一人ぼっちになるなんて。何が何でも先輩の手を離すんじゃなかった。しがみついていれば良かった。悔しいし、情けない。
頬を伝う涙を手でゴシゴシと拭い、音すら鳴らない携帯を眺めていたら、香苗さんの顔が浮かんできた。迎えに来て貰おう・・・でも、その前に、おばちゃんの夜店に行かないと。焼きそばとウィンナーを絶対買いに行くって約束したから。
先輩を探すのを諦めて、来た道をトボトボと俯いて歩き始めた。
「ーー真尋・・・」
先輩の声が聞こえたような気がして、辺りをキョロキョロと目を凝らして見渡したけどいなかった。気のせいだろう、そう思い再び歩き出すと、今度ははっきりと名前を呼ばれた。声のした方を見るとそこにいたのはーー。
「久喜さん・・・?」
「真尋と増井は⁉」
「知りません。僕、先輩をずっと探していたんです。久喜さんの方こそ、先輩と一緒じゃなかったんですか?」
「列に並んでいたら割り込んで来た高校生の集団がいて、二人とはぐれたんだよ。この人だかりだし、なかなか見付からなくて。悪いけど探すの手伝ってくれ」
久喜さんかなり焦っていた。それもそう、二人がもともと付き合っていたの彼は知ってるし、焦るのも無理ない。
額から噴き出す汗を手で拭う暇もないのだろう。
何も疑わずに、彼の後ろを付いていった。
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