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第40話
有馬さんは眉一つ動かさず、僕の前に立ち、久喜さんを鋭い眼光で睨み付けた。
「どうして・・・?何で・・・?有馬さん・・・」
てっきりまた彼に嫌な事をされるんじゃないか、そう思っていた僕は彼の行動が信じられなかった。
「君の新しいご両親に頭を下げられたんだーー息子を守って欲しいって・・・あのサイトに君の顔写真が掲載されているのに気が付いた人が、学校側に匿名の電話をしたんだ。警察に相談しても、冗談だろうと取り合って貰えなかった。それなら、俺がおとりになって、その現場を押さえるしかない。俺が君に出来る唯一の罪滅ぼしだ」
有馬さんが淡々と答えてくれた。
「感動の再会か、馬鹿馬鹿しい」吐き捨てるように久喜さんが口にして、男らに、有馬さんを取り押さえるよう命じた。
その時だった。
「ちょっと‼何すんのよ‼勝手に入らないで‼」
久喜さんの知り合いのあの男性が、金切り声をきんきん上げたのは。
それに臆する事なくどかどかと入ってきたのは、警察だった。後ろから先輩も駆け付けてきてくれた。
狭い部屋の中、逃げる場所もなく久喜さんたちはすぐに取り囲まれた。
「真尋、有馬さん外に出ましょう」
先輩に手を握られ、ようやく彼に会えた安堵感からか涙がぽろぽろと溢れてきた。
可愛くない顔を彼に見られたくなくて、涙を手で必死に拭いながら、お店の外に出ると、二人のお巡りさんに両脇を抱えられた増井さんがいた。その手首には手錠が嵌められていた。
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