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先輩の焼きもち
僕は知らなかったけど、ここ半年あまりの間、若者の間でビターチョコという名の合法ドラッグが爆発的な広がりをみせていたみたい。その中身は、違法薬物の大麻とコカイン。ある高校生が中毒死してから、警察も関心を寄せるようになり、取り締まるようになった。大元締めは暴力団で、高校生を駒のように使い、売りさばいていた。久喜さんは、ていのいいバイト感覚で手を出し、深みにどんどんはまっていき、僕に飲ませようとしたあのラブドラッグ(中身は覚醒剤)にも手を出すようになり、薬物中毒から抜け出せなくなっていたらしい。増井さんも、違法薬物だとは知らずにビターチョコや、久喜さんとラブドラッグを愛用していて、美しさを手に入れた代わりに、薬物中毒という一生消えない足枷を担うことになった。先輩は、泣き崩れる彼に、こうなる前に気付いてやれなくてごめん。それだけ口にし、何度も謝っていた。
「有馬さん、真尋に近付きすぎ」
「俺がいたから、真尋が助かったんだろう。感謝して欲しいね」
久喜さん達が警察に連行され、真っ直ぐ家に帰ろうと思ったけど、親切にしてくれた夜店のおばちゃんの顔が浮かんできて、先輩と向かったら、有馬さんも付いてきた。
ウィンナーを頬張ってると、先輩がニヤニヤして体を寄せてきた。有馬さんも負けずに、僕にペタりと張り付いていた。
風が殆んどなく、むしむしする熱帯夜。更に暑苦しい。「ケチャップついてるぞ」有馬さんが口の端を指でなぞり、それをぺろっと舐めた。
「ちょっと有馬さん‼」
先輩が苛立ちを露にする。
「遅い君が悪い」
「はぁ⁉」
何もこんな所で口喧嘩始めなくてもいいのに。
有馬さんを見てもドキドキしなくなった。姉さんの元旦那として、一友人としてこれからは付き合ってほしいと彼。
当然先輩は面白くない。
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