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第5話

 世界が違いすぎて、興味もなければ知りたくもない。大学入学後には、華やかな容姿の隆春を引き入れようとする、インカレナンパサークル勢が、校門に引きも切らなかったという。  誰にでも愛想が良く、付き合いもいい隆春が、何故だか深青に敵愾心を抱いているらしいということは、程なくして知れた。 「……申し訳ありませんが、営業時間内にアポイントメントを取ってお越し下さい」  深青が言外に、予約もない深夜の訪問を非難する。もちろん隆春が時間内にアポを取ろうとしても、すべて断るつもりだ。  とにかく深青には時間がないし、仕事以外の面倒ごとはごめんだった。いきなり夜中に大学時代の同窓生が、二年半ぶりに訪問してくるだなんて、厄介ごと以外の何物でもないだろう。  そもそもこの事務所を開いてまだ二ヶ月ほどで、広告にまで手が回っていない。隆春はどこで事務所のことを聞いたのだろう。  考えられるのは、元の青山の事務所繋がりだけだけれど、青山にいたときに隆春の話は聞いたことはない。というより、既に就職活動に入った時点で、隆春のことは忘れ去っていた。  敵愾心、というのか、素っ気なくされたり、軽く無視されたり、睨まれたりという程度のことではあった。それでも、故意に繰り返されることで、深青はたいそう気分を害したものだ。  学食などで深青の姿を見つけた途端、騒がしく自分たちのやんちゃぶりを声高に話す隆春のグループに、あきれ果ててもいた。

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