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テディとの暮らし 1
テディが住んでいる家は元々は炭焼き職人が住んでいたらしい。
家の他にも小さな炭焼き小屋があるのだが、そちらはもう何年も使っていないようだ。
それならテディは森で何をしているのかと言えば、彼は木を植えているのだ。
俺たちが初めて出会ったあの森の中の広場に生えていた小さな木は、テディが植えたものだったらしい。
森の中で芽を出した若木を探してきたり、地面に落ちた実や種を採り尽くさない程度に拾って家の側の畑の一角で苗木に育てたりしたものを、サッカー場くらいの広さがありそうな広場に植え替えているのだ。
今日も朝から広場で木を植えるテディを手伝っていた俺は、昼の弁当を食べながらテディに話しかけてみる。
ちなみに今日の弁当は、厚めのクレープというかタコスみたいな小麦粉を焼いた皮に、炒めた肉と野菜を巻いたものだ。
「ねえ、テディ。
ここに植えてる木って種類がバラバラみたいだけどいいの?
植えるんだったら、材木にしやすいまっすぐに伸びる木とか炭にしやすい木とかにした方が良くない?」
林業のことなんか学校でほんのちょっと習っただけだからよく知らないけど、テディみたいに低木から高木から細い木から太い木まで、何でもかんでもごちゃ混ぜに植えるのはおかしい気がする。
けれどもテディは俺の言葉に首を横に振った。
「材木や炭にする木じゃなくてもいいの?
でもこれ、何十年後かに切り出して使うために植えてるんでしょ?」
けれどもテディはまた首を横に振る。
「え、切り出すためじゃないんだ。
あれ、そう言えばこの広場から続いてる道って、細くて木を運べるような道じゃないよね。
んん?
そうすると、ここって元から生えてた木を切り出してできた広場じゃないってこと?」
俺の推論を、テディはうなずくことで肯定する。
「それじゃあ、なんで森の中にこんな広い空き地があるの?
ここって元は何があったの?」
俺の疑問に、テディはあいまいな笑みで答えた。
話すことのできないテディとは、彼の唇を読むことで一応会話はできるけれども、唇を読むための翻訳魔法的なものは完全ではないらしく、理解するのに時間がかかるし、時々は読み間違えたりもするので、俺たちは普段からあまり複雑な会話はしない。
けれども今のテディは説明が長くなるから話さないというよりは、事情があって話したくないように見えた。
「ま、それはどうでもいいか。
とにかく、この広場全体に木を植えて、周りの森みたいにすればいいんだよね?」
俺はテディに説明してもらおうとするのをやめて、話題を変えることにする。
きっとテディにはテディの事情があるんだろうし、彼が言いたくないのなら聞かない方がいいだろう。
俺があきらかに話題をそらしたことはテディにもわかっただろうけど、テディはそのそらした話題に乗るようにうなずいた。
「じゃあ、もっとドンドン木を植えないといけないね。
よし、昼からもがんばるぞ!」
わざとらしく立ち上がってこぶしを振り上げた俺を見ると、テディも立ち上がって同じようにこぶしを振り上げ、俺に笑って見せた。
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