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訪問者 1

 そんなふうにして、ささやかだが幸せな生活を送っていたある日の夕方のことだ。  夕飯の支度をしている途中、外に薪の追加を取りに行ったテディがなかなか戻って来ないので、様子を見に行こうとドアに近づくと、外から男の声が聞こえてきた。  えっ、テディの声? ……いや、違うよな。  テディはしゃべれないはずだし、それに声はテディと同じような年の若い男性のもののようだが、神経質そうな甲高い声で、たとえテディがしゃべれたとしてもテディの体格と性格であんな声や話し方になるとは思いにくい。  って言うか、あれ、何語だ?  男が話しているのは、俺とテディがいつも会話に使っている日本語とは違う言語だ。  俺が聞いたことのある英語や中国語やその他の外国語とも違う、全く未知の言語のような気がする。  なんなの、あの言葉。  って言うかあれ、誰かがテディに話しかけてるんだよね。  誰だ?  テディとはもう2カ月くらいは一緒に暮らしているけれど、テディが街に出かけて行くことはあっても、誰かがテディを訪ねてくるなんて初めてだ。  テディ以外の人間が外にいるなら、俺は見つからないように隠れていた方がいいのはわかっていたけれど、俺が来てから初めてテディを訪ねて来たのがどんな男なのか、どうしても気になってしまって、俺はドアを細く開けて、外をのぞいてみた。  幸い2人が話していたのはドアから少し離れたところだったので、2人ともドアが開いたことに気づかなかったようだ。  テディと向かい合って話しているのは金髪の若い男だった。  声から受けたイメージ通りの、神経質そうな顔立ちのひょろりとした男だ。  男はいらだった様子で、俺の知らない言葉でテディに話しかけている。  テディはその言葉に首を横に振り、男はさらに何かを言い返して、この家の方を指差した。  ……やばっ。  男がこちらを指差した時、視線をこっちにやったから、もしかしたら俺がドアの隙間からのぞいているのに気付かれたかもしれない。

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