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訪問者 2
慌ててドアを閉めて鍵をかけようとしたが、少し遅かったようだ。
外側からドアが開けられ、テディと話していた男が俺の腕をつかんだ。
「んー……ああ、『日本人』か。
これはいい」
そう言うと男はニヤリと嫌な感じの笑みを浮かべた。
「もらって行くぞ!」
男はそう言うと俺を抱きかかえ、いきなり何かの歌を歌い出した。
そのとたん、男の体が俺ごと宙に浮く。
「何だよ、離せよ!」
慌てて男の腕の中から何とか逃げようとするが、その間にも俺を抱きかかえた男はどんどん高く浮かんでいく。
テディも男の服をつかんで必死に止めようとしてくれていたが、見えない力にはじき飛ばされたようになって尻もちをついてしまった。
「テディ!」
焦った顔で必死にこちらに手を伸ばすテディを置いて、男と俺は空高く上がり、家から離れて森の外の方へと飛んで行く。
これ魔法、なんだよな?
普通に考えて、魔法でも使わなきゃ空をとんだりできないだろうから、この男はこの世界に少数いるという魔術師なのだろう。
飛びながらもずっと歌を歌っているから、もしかしたら歌が呪文になっているのかもしれない。
けど、この歌、なんか英語っぽいんだけど……。
歌の内容がはっきり聞き取れるほど英語がわかるわけじゃないけど、でも歌の中に「we can」とか「fly」とかの英単語があったのは聞き取れた。
って、そんなことはどうでもいいから逃げなきゃ!
そう思った俺は、落ちないように片手でしっかり男につかまりつつ、もう片方の手で男をポカポカ殴り足をバタバタさせて暴れる。
「降ろせよ!」
俺が暴れ出すと、男は露骨に嫌そうな顔になった。
そして歌いながら高度を下げていき、森の中に着地すると歌をやめた。
今だ、逃げなきゃ!
慌てて男を突き飛ばしてかけだしたが、その次の瞬間、男はさっきとは別の歌を歌い出した。
あ、これ子守歌……。
ドイツ語かフランス語か英語か、とにかく日本でも訳されたものが有名な子守歌の原語らしき歌が聞こえてきて、俺は急激な眠気に襲われる。
聞いたら、だめだ……。
慌てて耳をふさいだが、遅かったらしい。
強制的に与えられる眠気に抗うことができず、俺はその場で意識を失ってしまった。
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