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相思

メッセージを何回かやりとりして、春翔はようやく悠と2回目の待ち合わせの約束が出来た。 今度は学校内で待ち合わせる。 東京に戻って初めて悠と会った時、同じく再会した拓から投げつけられた言葉は春翔を打ちのめした。 『春翔さんがもっとフォローしてると思ってたけど』 『会う努力はしたの?』 返す言葉もなかった。 バイト中に受けたレイプ被害に傷ついていない訳がない。 なのに悠が自分をどう思ってくれているのか、そんな事ばかり気にしていた。 悠が先にバイトを辞める時は、心身を休める為に少し時間をおいた方がいいと思っていた。8月末で自分も東京へ戻って来た時はすぐに連絡を入れたが、中々都合が合わないという悠に合わせて、ひたすら受け身に連絡を待っていた。 嫌われたくなかった。結局は自分の事だけを考えていたと言われても仕方ない。 メッセージで悠の気持ちを直接尋ねる事もしなかった。まるで何もなかったかのように、そうする事の方がいいのではと思って、たわいもない話題だけに終始した。 正直、関わり方については何が正解なのか今もよくわからない。深い傷からの立ち直り方はこれだという答はないから。 ただ、悠の気持ちを気遣って、ではなく、悠が自分をどう思っているか、が優先事項になっていた事実は拓の指摘通りで、その事に春翔は打ちのめされていた。 しかも、事件前の飲酒見逃しは春翔に100%非がある。 自分の至らなさの自覚と、それでも悠への想いは募るばかりで、春翔自身、整理のつかない日々を過ごしていた。 「春翔」 呼ばれて顔を上げる。 「白衣…」 悠が白衣を纏って現れた。薬学部と以前に聞いて、白衣を着ればさぞかし似合うだろうと想像したことがあった。色白の肌に美しい顔立ちに白衣という生身の迫力が目の前にあり、思わず挨拶より白衣と呟いてしまう。 「あっ着たままだった」 悠が春翔の呟きを聞いて気づき、慌てて脱ぐ。 「脱いじゃうの?」 「うん、研究室にいる時に着るもんだから。午前中は講義無くて研究室に居たんだけど、春翔に会うと思うとふわふわしてて、今言われるまで着たままって気づいてなかった」 「ふわふわ?」 「んまあ、ソワソワというか」 「ソワソワ?なんで?」 「なんでって…」 悠が困ったように俯いた。

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