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相愛
自分の横に座った悠の顔を春翔は覗き込む。色白の頬がほんのり赤みを帯びている。
「悠さん、もしかして俺と会うの楽しみにしてくれてた?」
「そりゃ…」
春翔ははあーっと大きく息を吐いた。
「めっちゃ嬉しい、俺むしろ避けられてるのかなって思ってたから」
「え…何でそう思う?この前、拓と帰ったから?」
「拓と帰ったって言うか、この前の時はそもそも泉と拓が来ると思ってなくて、俺と二人で会うのは嫌なのかなぁって考えましたよ。今日も、直ぐに約束出来なかったし」
「二人には、もちろん会いたかったけど、」
悠が言いかけて口をつぐむ。
「けど、何?」
「…春翔と会いたいけど、いきなり二人で会うのは緊張するから、泉と拓から連絡あった時、一緒に会えば緊張しなくてすむと思って」
「緊張って、悠さんが?」
「春翔はどういうつもりで俺に会いたいって連絡くれてるのかがわからなくて。色々考えすぎて」
春翔はがばっと悠を見る。
「どういうつもりって俺、言ったよね?悠さんがバイト辞めた日に好きだって」
「そう言われて嬉しかったけど、こっち戻って冷静に考えると、あの時の状況的に俺を慰めるつもりだったのかなとか」
「俺キスしたんだよ。慰めでキスはしないでしょ」
「だから、嬉しくて浮わついたり、やっぱり違うかもって考えたり、気持ちが整理つかなくて」
悠の頬が一層赤みを増す。
「春翔はバイトの最初の頃、彼女と別れたから新しい恋を見つけに来たとか言ってただろ?俺は男で…そんな簡単に自信持てないよ」
会う約束が一度で決まらなかった理由はそういう事だったのかとわかる。
春翔は口元を手で押さえた。そうしないと、嬉しさで叫びそうだ。
「どうしよう…」
悠は顔を上げて春翔を見る。
「どうしようって何が?」
「キスしたい、今すぐ悠さんに」
「えっ、それは」
大学は夏休みが明けて後期の授業が始まっている。春翔達が座る大学キャンパス内のベンチ前は、当然ながら生徒たちが行き交っている。
色白の頬に赤みが増した悠は、春翔のキスしたいという言葉に慌てた表情を見せて、本当に可愛らしかった。
春翔は悠の肩に右手を回した。ほんとうにほんの一瞬の仕草で、悠の顎を左手で軽く押さえその唇に触れるだけのキスをする。
「は、春翔…」
春翔が手を離した途端に恥ずかしそうに俯く悠は、頬だけでなく首筋まで赤みが増している。
可愛さと愛しさで今すぐ抱きしめたい。
悠が軽く折ってベンチの背にかけた白衣を取り、それを膝にかけて前からは見えないようにし、その下で悠の手を掴む。悠は下を向いたまま、春翔の手を握り返した。
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