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傷心

悠の家の最寄駅の改札で待ち合わせていた。 秋は足早に通り過ぎ、季節は冬を迎えている。12月の初めの週末、悠と出会い半年が過ぎていた。 「春翔、こっち」 悠とはもう何度も待ち合わせている。学校でも、時間が合う時は一緒に過ごしている。 でも今日は、尋常じゃない緊張の中、現れた悠を見つめる。 「行こうか」 歩き始めたが、手と足と同じ方が動いているような感覚。 「ここだよ、どうぞ」 悠の家は、世間でいうところの高級住宅街の中にある。 「共働きって言ってたけど、土曜日も仕事なんだね、御両親」 「父親はアメリカにフライト中。実は国際線パイロットで、兄貴もそう。母親は元CAなんだけど、今はマナー講座の会社立ち上げて、今日は大阪泊まりって言ってた」 「飛行一家?じゃお姉さんもCAとか」 「正解、CAです。今週はパリじゃないかな」 「なんで悠さんは薬学部?」 「それが自分でも不思議。小さい頃から空や飛行機には全く興味無かった。生物とか実験とかが好きで」 家はいわゆる豪邸と表現しても差支えない家で、悠の部屋も広く勉強机以外にローテーブルが有り、気持ち良さそうな大きいクッションが二つ。当然といえば当然ながらベッドがある。春翔はベッドサイドにそっと鞄を置く。 「母さんに聞いたらやっぱり持ってたよ。俺の女装コンの写真。恥ずいけど、見せるって約束だから持って来る」 悠がアルバムとペットボトル2本持って部屋に戻って来た。 ローテーブルにアルバムを広げる。春翔が見ると、悠も横に並んで座った。 髪から微かに香りがする。悠が待ち合わせ前にシャワーを浴びていたのだと思うと、緊張が一気に高まった。 自分も来る前に念入りに念入りに、髪も身体も二度洗いしたけど。 「うわー、こりゃ優勝するよ」 アルバムの中の悠は、男性といわれても信じられないほどに美しい女性そのものだった。 「普段も綺麗だけど、メイクするとやっぱり映えるね、美女そのもの」 「…春翔はそういう格好の方がいい?」 「えっ?そりゃ綺麗だけど、でも、俺は女装の悠さん好きになったわけじゃないからなぁ」 「そっか」 悠がニコッとした。 可愛い…ほんとうに。 春翔は左手悠の頬に添え、右手で肩を抱く。唇を寄せると、悠の瞼が閉じる。 触れるだけのキスを何度か、そして舌を絡める。角度を変え、口内をあますところなくまさぐる。 唇を寄せたまま、悠の服の裾から手を入れる。すぐに胸の突起を探し当て親指と人差し指で軽く摘むと、悠の身体がビクつく。 乳首への愛撫を続けながら唇を口から首、耳へと移動させていく。悠の背中に手を回し、そばにあったクッションの上に頭を載せるように横たえる。 上着をぐっと胸が露わになる所まで引き上げると、悠の手が春翔の腕を抑えた。 「ま、待って」 見ると、肌も唇も色を失い、春翔を抑える手は微かに震えている。 「ごめん、待って…。ああもう…」 悠は両腕を交差させて自分の顔を覆った。 「ほんとごめん」 顔を隠したまま、謝罪を繰り返す。 「悠さん…」

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