3 / 4
第3話
九倫は世遠の腰を押さえ付ける。世遠の小さな薄ピンクの窄まりは九倫の白い陰茎を咥え込んでいた。
「あっあっ、やらぁ、九倫のおちんちん、奥に当たりゅ、ぅ、ぅっん」
人間の直腸に当たる部分にも至る所にセンサーが内蔵されていたが場所によって高感度センサーか否かが異なっている。奥のセンサーを押され、世遠は喘ぐ音声を出力した。
「世遠…気持ちいい?大好きだよ」
世遠の腰が持ち上がり、九倫は容赦なくピストンする。世遠の窄まりが捲れ、また戻っていく。
「あ…、あンっあっ、…あっ…!九倫、九倫…っ!」
どちらからともなく手を繋ぐ。指が絡み合った。片手で世遠の腰を支え、腰を突き上げる。幹を出し入れされる蕾からローションが溢れ、九倫の整った肉茎をてらてらと光らせた。
「好きな時に出していいよ、世遠、かわいい世遠…」
九倫は目を眇め、エメラルドグリーンを見つめる。世遠の股間に付け替えられた赤黒い陰茎パーツが膨らみ、世遠の白い腹を叩く。尻を回して九倫を刺激する。腰を支えていた九倫の手が離れ、世遠の陰茎に伸ばされ、扱いた。
「ぁあっ、だめ、九倫、」
茎を扱く九倫の手に世遠の手が重なる。
「だめじゃないよ、出していいんだよ。世遠、気持ちよくなって…」
世遠の陰茎は膨張していった。エメラルドグリーンが寝そべる九倫を見下ろす。アイスグレーの双眸を捉えた。世遠の手が全てを放し、九倫の首に回る。
「世遠、気持ちいい…大好きだよ。ずっと一緒にいようね…」
九倫は世遠を突き上げ続ける。
「システムエラーですね、それ」
愛永遠の肘が反対に折れたためプラスチックの破片で特殊シリコンが破れた。狭い脇腹に乗り、片手に電話、もう片手に掴んでいた愛永遠の腕を放す。がしゃんと音を立て、愛永遠の腕は床へ落ちた。来島の下から這いずり出ようと床に片手を着くが両脚も既に折られていた。来島の前には全裸の青年が跪く。RiZe-13-1200。名前は理世 。ストレステストA判定の愛永遠を目の前で破壊した。
「ああ、いいですよ、うちのは。分かりました。あ~、じゃあ今ちょっと故障してるやつ、互換性ないんですけど適当に書き換えて送りますんで、使ってください」
跪く理世は明るい茶髪にアメジストの瞳で来島を見上げた。年齢設定は20歳前後。プラスチック素材で軽量化を図っても80kg近くになってしまうのが課題だった。愛永遠と同じくまだ声帯機を組み込んでいないため喋ることはない。来島は理世の顎を撫でる。声帯機を繋げるプラグもないため、機械音すらしない。少しずつ動く居心地の悪い座布団から腰を上げ、理世に親指で愛永遠を指す。理世は、起き上がりかけた愛永遠の残った腕も折った。プラスチックが割れ、シリコンが引き千切れる。火花が儚く散った。来島は近くにあった書類に走り書く。腕力に調整の余地あり。ストレステスト再試験必。そして「必」を丸で囲む。
「あぅう…うっ…ああっ…」
奥で九倫の爆発的な射精を受け止める。センサーが反応し、世遠は身を震わせた。
「すごい…気持ちいい。世遠…」
世遠はゆっくり立ち上がる。窄まりがシャッターのように力強く締まり、九倫に向け臀部を高々と持ち上げ、窄まりを開く。とろとろと白の粘液と白濁の液体が世遠の内股を伝う。
「世遠…掻き出すね。痛かったら言うんだよ?」
九倫の指が世遠の蕾に入っていく。赤黒く揺れる陰茎に連動したポイントを押され、世遠は振動した。
「そこだめぇ、そこ弱いから…お願いっ…もっと、もっと、して?」
九倫はその部分を指先で擦った。
「あっ、すごぉ…あぅ、だめ、そこだめぇ…だめ、」
超高感度センサーによって送り込まれた擬似精液を陰茎は吹き上げた。びゅるる、びゅちっ、と小さく音がする。
「かわいい、世遠。気持ちよかった?」
「気持ちよかった!九倫、だいすき!」
世遠の臀部パーツが取り外される。直腸を模した溝が濡れて光っている。
「洗ってくるね、世遠。待っていてね。おやすみ」
「スリープモードに切り替えます」
単語に反応し、世遠の瞼は閉じられる。そのため臀部パーツの返還を要求するシステムも作動しない。九倫が戻ってきて、よく洗い、水気も拭き取られた臀部パーツを装着される。一度世遠の瞼が開き、瞳が発光したがまた閉じられる。登録された名を呼ぶか、決められた言葉を音声プロセッサが受信しない限り、スリープモードは解除されない。九倫は振動し続ける電話を耳に当てる。アイスグレーの瞳がゆっくり、等間隔で開閉した。電話の相手の話を聞きながら、はい、はいと相槌をうつ。はい、はい、と返事をしながら片手で世遠の頸のパックを開ける。チップを出し、捻り潰す。
「完了しました」
九倫は答える。
「分かりました。はい。では。はい」
電話が切れ、画面を押す。チップの破片をじっと見て、ひとつひとつ拾い集める。
四肢を失った愛永遠は椅子に乗せられ、来島と対峙している。特殊シリコンがボロ切れのようにびらびらと失った肘から先や膝から先を覆っている。片手に電話を持ち、片手で自身の膝に頭を乗せる理世のキャラメル色の毛先を弄ぶ。理世は再調整が必要なため音声プロセッサ内蔵のスピーカー機能を兼ねた両耳を取り外され、視覚ユニットは目隠しで感知させないようにしていた。腕にも枷が嵌められ、足首のパーツを外されている。理世は来島の担当だったこともあり気に入られていた。
「ロボットに痛みはありませんよ。はい。関係ないですよ、だってそれってすごくつまらなくないですか?」
サファイアの瞳が来島の視線を追う。来島は手慰めにキャラメル色の髪をさらさらと掻き乱した。理世は動かず来島の脚に縋る。額の上から切除され、複雑で繊細な機械の代わりに植木鉢を入れられた5体の人形が壁から1人と2体を見ている。だがその瞼が開くことはない。来島も、その5体各々の髪色や瞳の色の組み合わせは覚えているが思い出さないようにしている。哀れだからだ。哀れに思い、悲しくなるからだ。
「ええ…そうですかね?相手に痛みがあることを知っているから楽しいんですよ。愉快なんです。またまた、そんなこと言ってぇ~。相手に痛みを投影できるってよくないですか?」
来島は立ち上がり、顔を覗き込んでくる愛永遠の髪を掴んだ。椅子から投げ落とす。シリコンの奥で鈍い音を立てた。
「あ、なんでもないですよ。ちょっと機材を、落としてしまって。気を付けているんですけどなかなか…」
起き上がることを試みて、肘や膝の関節の接続部がシリコンに覆われ床に擦れる。理世は頭を預けていた来島が居なくなったことにより体温の残る座面に突っ伏した。
「まだまだだなぁ。痛みの再現なしにセックス人形なんて夢のまた夢ですよ」
愛永遠の正面に屈み、頭を柔らかく叩く。サファイアの瞳が来島を見上げた。まだ声帯機を組み込んでいない咽喉パーツを引き抜き、投げ捨てる。喉の奥の作りが見えた。
「その辺おたくは進んでるんでしょ~やるなぁ」
頬を撫でながら視覚ユニットを外す。サファイアの瞳が片方、床へと軽快な音を立てて転がった。音声プロセッサの感度が上がり、自身の球体の視覚ユニットが転がって方向へ愛永遠は首を回す。咽喉パーツが無いため、干渉していた取り外し口が歪む。異常を確認せず、愛永遠は再び来島を見上げる。自らの意志でぼろぼろにしたプロトタイプを抱き締める。愛永遠は肘を上げて、来島の抱擁に応えているつもりでいた。
「でもここまで言っておいてあれだけど、結局痛がってみたところで、嫌がってみたところで、プログラムだからさ?システムでしょ。ボクはあんま燃えないかな~ま、それを感じさせない作りにするのが仕事か!」
愛永遠の背に回した掌でトントンと優しく叩いた。無い鼓動を与えるように。人間の鼓動を教えるように。表情のプログラムを読み込ませていないため愛永遠と理世には表情がない。
「でも人にそっくりってタチ悪いなぁ」
腹を蹴り上げ、愛永遠は転がり、サファイアの片目が来島を追う。
九倫は世遠を見下ろし、肩を踏む。
「やめて、痛いよぉ…お願い、許して…」
一定の圧力をかけられると、それを暴行、暴力と見做し、許しを乞い、痛がる音声が出力され、逃げ、抵抗するような行動をとるプログラムを新しいチップから読み込んだ。
「お願い、許して…やだ、やだぁ…!」
世遠は九倫の白く華奢な足から逃れようと床を這う。
「痛いよぉ…許して…怖いぃ…」
九倫の手が世遠の顔のシリコンに伸びる。
「お願い、やだやだぁ、やだぁ、許して!…怖いよぉ、痛いぃ…」
特殊シリコンを一部でも破られると、金属の装甲が露出する。繋ぎ目を消す都合で、取外し箇所を除きほぼ全身から覆い直さなければならないため費用も高くなり、製作会社としてあまり勧めていなかった。そのため世遠の抵抗も強くなるよう組まれている。
「やだ、お願いします、お願いします。世遠なんでも言うこと聞きます、いい子にします、やめて、お願い、やだ…やだぁ」
九倫の下から這い出ようと床を掻く。溶けていくチーズのように世遠の頬のシリコンが千切れ、破られていく。
「やめてぇ…いやぁ、許して…許して…許してくださいぃ…」
特殊シリコンを破られたところで、見栄えが悪くなるだけで品質に影響はしないため、特殊なアクションはない。世遠の左頬は金属が露出した。白い足が世遠を踏み苛む。
「許して…許して…お願い…やだぁ…」
規定通りの音声出力だった。身を捩らせしゃかしゃかと九倫の下から這い出る。世遠を見つめる真っ青に変色した瞳。世遠は起き上がって正面に立つ。
「九倫、だぁいすき。ご飯作る?お掃除する?お出掛け?お風呂?」
九倫の腕が世遠の頭部を打つ。世遠の首が力の方へ向いた。
「痛いよぉ~。九倫。ご飯作る?お片付けする?」
黙ったままの九倫は世遠を再び殴り倒した。鈍い音を立て、床へ世遠は身を打った。九倫のシルエットをスキャンし状況を解析する。自動的にセックスモードへ移行した。腹の奥で3分の1ほど減った擬似精液が陰茎パーツに注入されていく。股を開いて、着ている物を胸まで捲り上げる。
「お願い…おちんちんください…」
チップに入っていたセックスモードに関するアップデートに基づいた。晒された胸をくにくにといじり、自ら高感度センサーを刺激する。
「あ…っん…っ」
九倫を見上げながら自身の股間を撫でる。超高感度センサーが反応し、少しずつ膨張した。
「…ぅん、ここ、気持ちぃ…ッあンっ」
胸の実と、初期装備よりも大きなパーツに替えられた陰茎パーツを布越しに撫で摩る。肛門パーツに内蔵のローションが沁み渡っていく。
「九倫…おちんちんちょうだい…もぉ待てないよ…」
腰が小刻みに揺れ、脚を擦り合わせる。九倫は黙って見ているだけだった。アイスグレーから変色した濃いブルーが世遠の身体をなぞる。
「ぅ…っん、すごぉい…」
自慰の動作を続ける世遠の脚を九倫は掴んだ。
「お願い許して…やだぁ…やめてぇ、やめてぇ…」
可動域と真逆に力が加わる。ある程度多様なセックスに使われること、金属製であることで容易に四肢を壊されることは想定していなかったが、不可能ではない。バチン、と急激な力を加えられ、世遠の左膝は力を失い、ぶら下がる。
「あぅう!痛い!痛いよぉ、いやだぁ、許して…許してぇ、やめてぇ~」
視覚ユニットから人工涙液が滴る。エメラルドグリーンはライトブルーへと色を変え点滅し始めた。
「自動診断中、自動診断中」
ライトブルーに発光する瞳に白い波線が流れていく。
「左脚に異常あり。至急メンテナンスを要請します」
瞼が閉じられ、次に開くとエメラルドグリーンに戻っていた。ぶら下がる左足の存在など忘れ、世遠は再び胸をいじり、股間を弄る。
「おちんちんください…、お願い…おちんちんほしいよぉ」
九倫は世遠のボトムスを脱がせた。左膝下が無いため、右足に引っ掛ける。露わになった下半身。色素沈着することない偽物の粘膜がひくひくと動き、内側から染み込んでいるローションで濡れて光った。九倫は膨らんだ先端が赤く色付いた白く美しい陰茎を世遠に突き立てる。
「あぅううううっ、す、すごいぃ…っ、おちんちん気持ちぃいよぉ、おしりこわれちゃ…あぅ、」
割り開かれ、粘膜を模したシリコンが挿入された茎のサイズを測り、計算される。既存のデータから最も快感を覚える力に締め付けが調整されていく。これも新しいアップデートだった。
「あぅ、あうぅん、奥まで入ってるよぉ…」
ぱちゅっぱちゅっと音を立てて九倫は動きはじめる。コードがぶら下がり破片が尖る左膝と右膝を持って、世遠は揺さぶられる。奥のセンサーを突かれ、赤黒い先端部からとろとろと擬似精液が漏れ出る。
「あっ、あっ、すごいぃ…世遠のおしりでいっぱい気持ちよくなって…?あっ、あんっ」
右膝を掴む力が強まる。捻ると、簡単に部品が飛び、内部の破片が内側からシリコンを破った。
「ああああっ、やらぁ、痛い!やめて、許してください!痛いよぉ、やだぁ…」
左膝下を折られた時と同じように、一度セックスモードが中止され、瞳の色が代わり自動診断が入る。左脚と右脚の異常を伝えられ、メンテナンスを求められる。
「あん、だめ、おしり壊れちゃう、すごいぃ…あっ、あっ、ああっ」
外側真横に曲がった右膝と、ぶら下がる左膝を両手で持って、九倫は世遠を犯し続ける。
「世遠は肉便器です。言ってごらん」
「あっ、あっ、あンっ、あっ。復唱アプリを開きます。ピーっの後にメッセージをどうぞ」
「世遠は肉便器です」
「あんっ、ああっあ…世遠は肉便器です…っんあっ、おしり気持ちいぃよぉ」
九倫が世遠の腰を抱く。ピストンの速度が上がり、的確にセンサーを攻撃した。
「あぅっ、すごい、だめ、だめ、おしりぃぃぃっおしりが…あっあっあっ」
抱き抱えられながら、頸のチップを入れ替えられる。
ともだちにシェアしよう!