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終わりの見えない欲望2
いつまでもやる気のない俺に活を入れて来て、他の梓派だった人間に疎まれて、薬でも注入されたんじゃなかろうか?
同じ幻覚を二人同時に見ているに違いない
「イギリス系のマフィアなんて知らねえよ」
俺は気だるい身体をベッドに預けると、枕に顔を埋めた
「もういいだろ。私の妻は疲れている」
『妻』?
俺は眉間に皺を寄せると、聞き覚えのある声の主に視線を動かした
カイル、か
俺を『妻』と言ったか?
シャワーを浴びて濡れた身体のまま、ガウンを引っ掛けて出てきたカイルが、ベッドにゆっくりと腰をおろして、俺の髪に優しく撫でた
ああ? 俺が…「妻」ってなんだよ
しかも疲れさせたのは、お前だっつうの!
「か、カイル様っ」
佐伯と名倉の顔が真っ青になると、すすっと部屋の隅に逃げるように寄っていく
あ? 何だよ、なんでそんな怯えた表情してんだよ
もしかして…なのか?
「カイルが…もしかしてイギリス系マフィアってやつか?」
俺はびっくりして身体を起こす
びりっとケツに痛みが走って、ぼすっとベッドに倒れ込んだ
いてぇ…つうんだよ
痛くて、暴れたくなる
「お…お坊ちゃま、カイル様にそんな口調は…」
佐伯が頬の筋肉をひくひくさせながら、俺に小声で声をかけてくる
「良い。我が妻とは、身分も知らずに恋をした。ただそれだけだ」
恋なんてしてねえだろうが!
俺を脅して、足を開かせておいて何を言っているんだよ、こいつ
しかも『妻』って何だよ、妻って
俺は女じゃねえ
しかも誰とも結婚なんてしてねえんだよ
「夕食はこの部屋に持って来い。しばらく我が妻と、二人の時間を楽しんでいたい」
「は、はいっ!」
佐伯と名倉がそそくさと、部屋を出て行った
ちょ、待って…俺をこいつと一緒の部屋に置いていくな
マジで…困る
ぱたんとドアが閉まると、俺は「はあ」と息をはいた
カイルが、細い指先で俺の肩から腕を撫でまわした
「蛍、僕は…」
「嘘つき。全然、俺の部下じゃねえじゃん。『ボス』とか言っちゃって。散々、俺のケツにデカイのを突っ込みやがって」
「いきなり身分を明かしたら、絶対に蛍は僕を受け入れてくれないと思って」
「身分を明かす前から受け入れてねえだろ。無理やり俺に足を開かせておいて、何が『我が妻』だよ」
「妻だよ、蛍は。僕の可愛い妻だ。梓もオッケーしていた」
「あ?」
「僕と蛍の結婚を。望んでいたよ。だけど急に連絡が途絶えてしまって。どうしたことかと…調べたら、梓は死んでいた」
「俺が殺した」
「違う。道元坂 恵という男だ。あの男は目障りだ」
「ちょ…待てよ。あいつらには、手を出すな」
「どうして?」
「どうしても、だ。カイルの妻になるから。絶対にあいつらには…」
カイルの目が細くなり、むすっとした表情になった
「気に入らないな。どうして蛍はそうやって他人を庇う?」
「庇ってるわけじゃねえ。ただ俺の大切な奴らだから。失いたくない」
カイルが俺の鎖骨の上に指を乗せた
「このキスマーク、気に入らない」
カイルが、指でグリグリと鎖骨を押す
「あっ、いたっ…カイル、よせっ」
骨が折れんじゃないかってくらいの痛みに、俺はカイルの手首を掴んだ
「やめっ、カイル!」
鎖骨から手を離したカイルが、俺の上に跨ると、鎖骨にガリッと噛みついた
「あっ、いっ…痛いって」
俺はカイルの背中を叩く
「蛍は僕のものだ。他のヤツの印などいらない」
「わかった…わかったから」
俺から離れたカイルが、血の滲んだ鎖骨をぺろっと舐めた
「僕の愛、受け取ってもらえた?」
「ああ、ああ…受け取ったよ」
ただの我儘野郎じゃねえかよ
カイルがにこっと満足そうに微笑むと、ガウンを脱ぎ捨て、デカいブツを俺の眼前に差し出した
「舐めて、僕の。下の口が痛いなら、上の口で僕を満足させてよ」
下の口だろうが、上の口だろうが…嫌なもんは嫌なんだよ
だからって拒否れば、自分勝手に憤慨して、脅してくるのはわかってるし
俺は身体を起こすと、カイルの元気になったブツを咥えた
「…くっ、蛍…」
気持ち良さ気な声を出したカイルの熱が、重みを増す
おいおいおいっ、さらにデカくなるのかよ
苦しいっつうんだよ
俺の口のなかで、その存在をはっきりと示し、俺の呼吸を苦しくさせる
「ああ、蛍。気持ち良いよ」
カイルの腰が勝手に動き始める
俺の喉の奥にまで、カイルが突き刺さり、吐き気が催す中、カイルが絶頂を迎えた
苦い液が、俺の喉の奥で発射され、気持ちとは裏腹に俺はゴクリとヤツの欲望を飲み下した
にがっ、まずっ
俺は激しく咳き込んで、飲み込んだ異物を吐きだそうとしたが、唾が飛び散るだけで、何も出てこなかった
「まだまだ、僕は満足してないよ、蛍」
萎れもせず、びんびんと元気に突き立っているカイルが、また俺の呼吸を阻んでくる
なんて野郎だ
俺は気持ち悪いんだよ
いつになったら、俺はこいつから解放されんだ!
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