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カイルVS恵2
カイルが僕から離れると、「そう。じゃあ、応接室に通して」と答えた
ドアが静かに閉まると、カイルが大きく伸びをした
「カイル?」
「ん?」
カイルが、金髪の髪をさらりと揺らして、微笑んだ
「平気、か?」
「何が? 何を聞かれるか…ぐらい予想はついてるし。あちらさんだってある程度の調べをつけて乗り込んできてるはずだよ」
「揉め事になるのか?」
「向こうの出方しだいかな? 僕は、蛍を手放すつもりはないから。無理矢理でも連れて行こうとするなら、揉め事になっちゃうかもね」
「俺も…顔を出すべきか?」
「出さないで。僕は、蛍を誰にも見せたくない。蛍は僕のモノだ。宝物は大切にしまっておきたいタイプなんだ、僕」
カイルが俺の眼前で、にっこりとほほ笑むとちゅっとキスをした
クローゼットから、細身のスーツを出すと、手早く着替える
鏡の前で、ワックスと手に取ると、軽く金髪を後ろに流した
「蛍、絶対に部屋に居てよ」
「わかってるよ。出ない」
僕の答えに満足したカイルが、コクンと頷くと寝室を出て行った
親父が来たって…カイル、平気かな?
カイルと親父の力関係ってどんなんだよ
親父のほうが上なのか?
それともカイルなのか?
そのへんは全くわからねえよ
真面目に、侑から教わっておけば良かったな
侑…か
ライさんの想い人
今の侑への気持ちは忘れてないのかな?
…たく、俺にはわからないことだらけだっつうの
俺は紅茶のカップを持って、立ち上がるとよろよろとカートまで歩いた
カイルが淹れてくれた残りの紅茶を、ポットからカップに移すと、またよろよろとベッドに戻って、生ぬるい紅茶に口をつけた
やっぱ、甘いなあ
まるでカイルみたいだ
ガチャとドアが静かに開き、俺はぱっと顔をあげた
「カイル? 忘れ物でもしたのか?」
俺は声をかけながら、部屋に入ってくる人間の影を見つめた
「…て、ライさん?」
驚いた
ライさんがこんなところに入ってくるなんて予想外で
俺は紅茶を持っている手がカタカタと震えだした
「しばらく見ないうちに、随分と野性的な格好を好むようになったのですね」
俺は自分の素っ裸を見てから、ライさんに視線を戻す
確かに
素っ裸で、花の絵柄がついたティーカップを飲む姿は傍から見れば、格好が悪い
こんな姿を見て、「可愛い」などと口にするのは、カイルだけだろう
「服を着るとカイルが煩いんだ。朝昼晩と、構わず盛ってくるし、いちいちその度に、脱いだり着たりすんのも面倒だしな」
俺はカップを棚の上に置くと、布団の中に身体を入れた
やっぱ、ちと恥ずかしい気持ちが芽生えた
微妙に俺の身体を知っているライさんだしな
「さっさと服を着てください。恵が話を引きのばしている間に、ここを出るのです」
「え? いいよ、別に。俺、この部屋を出るだけでもカイルにすげー怒られるし」
「だから、ここを出るのです。ここさえ出れば、あとは恵が…」
「いいんだよっ! 俺がここに居たいんだ。俺のことは構わなくていい」
ライさんが眉間に皺を寄せる
理解できないと言わんばかりの表情だ
「あいつ…俺が居ないと生きていけないから。傍にいてやりたい。ライさんこそ、この部屋に入ったってバレたら、大変だぜ? 戻れよ」
「そういうわけには行かないんです! 恵の命令ですから」
ライさんが、目を吊り上げると、ポケットからスプレーを取り出して、俺の顔面に拭きかけた
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