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カイルの反撃
ー恵sideー
私は携帯を耳に当てると、「はい」と声を出した
『返してください。僕の妻なんだ』
「なんのことかな?」
私は白々しくカイルに返答した
『蛍は僕のモノだ』
「蛍は私の息子だ。息子と一緒に暮らしたい。たった一人の家族だからな」
『蛍に代わって』
「あいにく蛍は出たくないと言っている」
『馬鹿な! 蛍はあの部屋から一歩も出ないと僕と約束した』
「約束は無効だな。梓の組織など、お前にくれやる。だが蛍は、お前にはやらん」
助手席のライが、携帯を見るなり、私に振り返った
目を見開き、顔色が青くなりながら、私にライの携帯を見せてきた
『家の中に、誰かがいる。早く帰ってきてくれ』という智紀からのメールを見ると、私がごくりと唾を飲み下した
『蛍をこちらに渡したくなるように仕向けないと駄目なようですね』
カイルの言葉に、私の背中に一筋の汗が流れた
マンションの入り口、裏口、駐車場、それに部屋の前に各2人ずつ見張りを置いた
そのどれからも報告が来ず、なおかつ智紀もメールで室内に侵入者がいるってことは…
私の部下は何の意味もなく、殺されたのだな
少しは抵抗したか?
いや、敵がいると気づく間もなく射殺されたか、ナイフで首を斬られたか…そんなところだろう
「勝手に私の家に上がり込むとは、失礼だな」
『ああ、気付いてたんですか。部下から報告がありましたか?』
「優秀な部下だからな」
こんなところで強がっても、意味がない
智紀、どうか無事でいてくれ
私が部屋に戻るまで…奴らに捕まるな
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