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ライの素直な気持ち
ー蛍sideー
「ジュニア、お腹が減りました」
ライさんの突然の発言に、俺はびくっと肩を跳ねあがらせると、ソファからひょこっと頭を出した
寝室でずっと誰かと電話をしていたライさんが、ドアから顔を出している
「え?」と俺は聞き返すと、ライさんがむすっとした顔になる
「だからお腹が減りました」
「はあ…」
「鈍感!」とライさんが怒鳴る
「え? あ…なんか宅配してもらうのか? メニュー表とかあれば…」
「いちいち説明しないとわからないんですか? 僕はお腹が減ったと言ったんだ。そこに冷蔵庫があるんだから。なんか適当に食べられる物を作ってよ」
「え? 俺が?」
俺は自分で自分の顔を指でさした
「あいにく僕は、料理ができませんから」
「いや、でも」
「何ですか?」
ライさんがじろっと俺を睨む
「だってライさんは、智紀の料理しか口にしないんだろ?」
「馬鹿ですか? 今、智紀はいなんですよ。誰が僕の食事の世話をしてくれるんです?」
食事の世話って…介護老人じゃあるまいし
「なら、どっか食事に行くとか。宅配サービスとか…」
「外の食事は嫌いです。味付けは濃いし、身体に悪そうな物ばかりで。胸やけがするんです」
「でも、俺のでいいの?」
「だから作れる人間が、ジュニアしかいないでしょ」
「本当に俺で…」
「しつこい男は嫌いだ。僕が良いと言ったら、良いんだ。さっさと作って。お腹が減って苛々する」
バタンと勢いよく寝室のドアが閉められた
すぐにライさんの英語が耳に入る
またどこかに電話しているのだろう
親父が飛行機でどっかに行っちゃったんじゃ…他の業務をライさんがやらないとなのだろう
俺はソファを立つと、冷蔵庫に足を向けた
「ライさん、夕食ができたよ」
俺はドアをノックしてから、そっとドアを開けた
ライさんがベッドに座って、書類と睨めっこをしていた
顔をあげると、「わかった」と呟いた
俺は廊下と寝室の境目に足を置いて、じっとライさんの横顔を見つめる
女性のような綺麗な艶のある髪がさらっと動くと、ライさんの視線が俺に向いた
「食事をここまで運んでもらえませんか? 仕事をしながら、食事をします」
「あ…でも、俺…寝室に入っていいの?」
「は?」とライさんの冷たく言い放つ
「だってライさんの許可がないと寝室には入るなって」
「聞こえませんでしたか? 食事を運べと言ったんです。それはつまり許可しているって同じことじゃないんですか?」
「あ、そっか。わかった。すぐに持ってくる」
俺は寝室のドアを閉めると、お盆にライさんの食事を乗せた
俺はもう一度、寝室のドアをノックするとゆっくりとドアを開ける
ライさんはさっきと同じ態勢のまま、書類を見ていた
俺は寝室に足を踏み入れると、ベッドの脇にある棚の上に、お盆ごと夕食を置いた
「じゃあ、俺…あっちに」
「蛍、僕は心の広い人間ではありません。自分でも、とても捻くれた性格をしているとわかっています。素直でもないし、他人に甘えるのが極端に下手です」
ライさんが、書類から目を離さずに淡々と口にする
「一度しか聞きませんから、本心をきちんと答えてください。いいですか?」
「え…あ、うん」
「僕とカイル、どちらに恋愛感情がありますか?」
「ライさん」と、俺は即答した
「わかりました。今夜は一緒に寝ましょう」
「え?」
「いえ…今から、寝室は出入り自由にします。好きな時に、好きなだけ入ってくれて結構ですから」
俺は立ちつくしたまま、じっとライさんを見つめた
やっと書類から目を離したライさんが、俺を見あげた
「いつまでも僕が、死んだ人間に想いを寄せていると思っていたんですか?」
「え? あ、いや…まあ、そうなんだけど。それに智紀を愛してると思ってたし。俺はただの性欲処理に使われていただけだと…」
「ただの性欲処理に、恋人になるための無理な課題を出さないでしょ…普通は」
ライさんがにこっと微笑んでくれた
「俺、今…すげー嬉しいんだけど」
「セックスしますか?」
「して…いいの?」
「僕は欲求不満で苛々しています」
俺は、ジャンプしてベッドの上に飛び乗ると、ライさんに抱きついた
「ちょ…待って!」
ライさんが大きな声をあげた
「だって…していいって」
「大事な会社の書類を持ってるんです! 精液で汚すわけにはいかないでしょ。片付けますから、少し待ってください」
「待つ」
俺はベッドの上で正座をした
ライさんがベッドに広げた書類をかき集めると、クリアファイルに丁寧に閉まって、床に落とした
「さあ、いいですよ」
ライさんが両手を広げてくれると、俺は笑顔でライさんの胸に飛び込んだ
セックスしていいって言われているのに、キスから先になかなか進まない
ベッドの上で深いキスを何度も繰り返している
ライさんの唇が赤く腫れ始めている
お互いの下半身は、熱くてキツイのにキスが止まらない
舌と舌を絡め合わせたり、唇に吸いついたり、噛みついたり
キスにもいろいろあるもんだと、思わず感心してしまう
ちゅっ、ちゅっと唇が離れるたびに音がなり、寂しくてまた口を寄せてしまう
キスだけに満足いかなくなって痺れを切らしたのは、ライさんが先だった
俺のシャツを脱がしにかかる
数秒間だけ口を離すと、その間に俺の上半身を裸にする
それからズボンのベルトに手をかけて、かちゃかちゃとキスをしたまま、外し始めた
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