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ライの素直な気持ち3
「カイルという男のところへ…戻るなってこと。どんな状況になろうとも、僕を恋人にしたなら、離れるな」
「もしかしてバレてた?」
「バレバレですよ。僕が寝たら、勝手にここを出て行こうと思っていたでしょ? そういうの…虫酸が入る。僕たちが何のために、蛍をここに来させたのか。よく考えて行動してください。恵はどうだか知りませんけど…僕は、蛍を手放すつもりは全くありませんから」
「智紀は?」
莱耶が寂しそうに微笑む
「恵がどうにかするでしょ? 強硬手段に出ても構わないですし」
「どういう意味?」
「撃ち合いです。まあ、全面戦争とでも言うんでしょうか?」
「そんな…」
「蛍、僕は大切な物を大切だと認めたら、何があろうとも他人に渡すつもりはないんです。認めるまでに、少々時間がかかり過ぎるという問題は、この際どうでもいいんですが…」
莱耶が俺から離れると、身体を起こした
「いいですか? 僕の物になったのだから、しっかりと僕の言うことを聞いてもらいます。できないのなら、僕が今ここで撃ち殺します」
付き合っても、俺は銃を莱耶に突き付けられるのか?…なんて心の中で苦笑した
「智紀と俺と…天秤にかけて…」
「『天秤』? なぜ天秤にかけるんです?」
「だって、智紀はカイルんとこに拉致られてるんだろ?」
「天秤にかける必要なんてない。僕にとったら両方とも大事な人で、失いたくない人間だ。悪いけど、どちらもカイルとかいう馬鹿男に渡す気はありませんね」
莱耶が不機嫌な顔になって、俺を見やった
「ちょっと…待ってよ。だって、現に智紀は…カイルんとこじゃん。俺が行かなきゃ…」
「行く? どこに? 僕から離れる気でいるなら、即刻殺しましょうか?」
「莱耶、真剣に俺の話を聞けよ」
「ええ、聞いています。僕はいつだって真面目に人の話は聞いてますから」
いつも、聞いてないじゃん!
「親父がもし…カイルの弱みを握れなかった場合、俺は…」
「却下」
「だから…俺の話を…」
「その案は、最初から聞き入れるつもりはありません」
「ライさん!」
「『莱耶』でしょ!」
「ああ…もうっ。俺の話を聞いてくれよ。俺は最終手段の話をしてるんだよ」
「最終手段は、戦うんです。恵だって言っていたはずです。人間同士を交換するつもりはない、と。僕もその意見には、賛成ですね」
莱耶が僕の上に乗ると、キスをしてきた
ちゅっと音がすると、俺は莱耶の腰に手を回す
「どうでもいい気の回しなんていらない。僕は毎日、蛍とこうしていたいんだ。あんな白人男に、僕のモノを取られるなんて…あり得ない」
莱耶がまた口づけをする
「だから行かないで。ずっと僕の傍に居てよ」
「…わかった。行かない。約束する」
莱耶が安心したようににこっと微笑むと、俺の上でごろんと横になった
「蛍、僕は誰かと付き合うなんて初めてなんです。僕を一人にしたら、どうなるかわかりませんよ」
「え? 脅し?」
「ええ、脅迫です。人間の心は儚く弱いものですから。何か強い繋がりがないと…」
莱耶がそこまで言うと、寝息へと変わっていった
すやすやと気持ちよさそうな呼吸が、定期的に聞こえてくる
よくよく莱耶の顔を見ると、目の下にクマができていた
数日間、あまり眠れてなかったのかな?
それってもしかして…俺のせいか?
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