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第3話

「なぜ河鹿さんと組みたかったのか、ちゃんとお話しようと思って」 鮫洲はそう話を切り出すと、ビジネスマン特有の本音の見えない笑顔で微笑んだ。 定時ぴったりに迎えに来た鮫洲に案内された先は、市内でよく目にするファミレスだった。 おしゃれな店じゃなくて良かったと胸をなでおろし、目に付いた定食のセットを適当に頼んだのがさっきの事。 臣人は何も言わず、鮫洲に視線を向ける。 「製造部の主任が言っていたように、河鹿さんの以前造ったものが流用できそう、というのも事実なんですが」 鮫洲は何かを思い出すように視線をそらす 「河鹿さんが造った物って、できる限り既存の部品が流用できるようになってて、目新しさは無いけど長年使えるものが多いんですよね」 そらされた視線が臣人の元に戻ってくると、もう一度微笑んだ。 「もちろん、革新的な技術も会社にとって大事だと思いますが、僕は河鹿さんの仕事、良いなって思います」 視線を外さないまま柔和に細められた目。 その目をじっと見つめてしまっている事に気づき、臣人は少しほほを赤くして俯いた。 「あ、ありがとう、ございます・・・・・・」 (なんか、ほめられた) その後も、鮫洲が話す内容に延々相槌を打ち続け、一時間ほどで店を出た。 (疲れた) 鮫洲が臣人を評価してくれているのは、嘘ではないと思う。 だが、臣人は昔からほめられるのが苦手で、本当にそんな風に思っているのか常に疑っていたし、ほめられた分、こちらも何かほめ返さないといけない気がして結局口ごもってしまうのだ。 でも今日の事はなんだか嬉しかったようで、少し心が浮ついているのを自分でも自覚していた。 「ロク、ただいま」 臣人は帰宅してすぐに寝室に向かうと、ベッドの脇に立たせてあるロクを起動させた。 ヴン、というかすかな起動音が鳴り、立ち上がるまでに数秒。 ゆっくりと目を開いたロクは、臣人の顔を認識し、口を開いた。 「おかえりなさい、臣人」 臣人はロクに着せてある白いシャツの前を開き、抱きしめる。 「すぐにセックスがしたい」 「はい」 臣人より15センチほど背が高いロクの声が少し上から降りてきて、そのまま崩れるように、二人はベッドに倒れこんだ。 額に、まぶたに、唇に、キスの雨が降る。 ロクには唾液が出る機能が搭載されていないので、舌を絡めるようなキスはしない。 電気の熱で暖かくなった人口の皮膚は、それでも割りと心地よく、臣人のわずかな反応を認識して記録された性感帯を確実に刺激する。 「んっ、は、」 刺激される場所は毎回同じだが、順番はランダムで、次にどこを刺激されるかは分からない。 目に搭載されたカメラで服の形状を認識し、自動で脱がしてくれるのだが、臣人はいつも同じ作業着を着ているので、認識速度が速く滑らかに服を脱がされた。 首筋、鎖骨と滑り落ちた唇が、左胸の小さな突起を捕らえる。 「んっ」 舐められる事は無いが、唇でつままれて上下に振られると、その行為に慣れた突起はすぐにぷっくりと硬さをもつ。 もう片方の突起も左手でつぶす様にこねられて、同じように腫れ上がった。 「あっも、う」 唐突に竿を握りこまれ、腰がはねる。 あまり無いパターンだったが、今日はそれほどまでに臣人が勃起する速度が速く、性急に進めるパターンへと分岐したのだろう。 仕組みを理解している事への安堵感で、臣人はロクにすべてを預けることができる。 ベッド脇のチェストに用意してある潤滑液を差し出すと、ロクはそれを受け取りいつもと寸分たがわぬ量を手に取り、臣人の後口へ塗りこんだ。 「ん、ぅ・・・・・・」 差し込まれた指は、完璧に学習済みであるはずの前立腺の位置を巧みにずらして刺激し、もどかしさから自然と腰が揺れる。 前も竿から玉までやさしく揉みこまれるように刺激され、高まる射精感に生理的な涙がにじんだ。 「はっ、あっ、あ、っも・・・・・・」 「入れても良い?臣人」 荒い呼吸で言葉が紡げない臣人の代わりにロクが尋ねる。 「んっ、ぅんっ・・・・・・!」 答えるなり挿入されたペニスは、平熱の体温より2度ほど高く、質量と共に熱さを感じた。 少し間を置いて腸壁が馴染むと、ロクがゆるゆると腰を動かしだす。 「あっ、あ」 未だ直接の刺激をもらえていない体が、自ら求めるように動くのを止められない。 もっと欲しい。 思い切りえぐって欲しい。 早く、早く、 「はやくっ・・・・・・!」 「はい」 「あっ!ひっ、んんっ?!」 短い返事と共に、容赦のない律動が始まる。 今まで避けられていた前立腺が内臓と共に押し上げられ、目の前に光が走った。 手放された臣人の竿が先走りを垂らしながら跳ねる。 腹に当たる刺激がもどかしく、自ら手を伸ばすと、竿を握った手ごとロクに捕まれ扱かれて、精液がせり上がるのを感じた。 体内ではロクのペニスが暴れている。 「あっあっあっっつ、んあ、あっ!もっ、いっ・・・く」 その声に反応し、ロクは臣人の竿を握った手の親指で、カリを軽くこすった。 「っ~・・・!!」 息を詰まらせ震える臣人の鈴口から、びゅくっと精液が放たれる。 ビクビクと痙攣する下腹部を優しくなでて、ロクはゆっくりと臣人の後口からペニスを抜いた。 ペニスを抜かれてなお名残惜しそうに震える穴を少しの間観察した後、ロクはいつものように 臣人の背中をさする。 「大丈夫?」 荒い息を整えるのに意識を集中させている臣人を気遣うような言葉。 だいぶ呼吸が落ち着くと、臣人はロクと目を合わせて言う。 「大丈夫。ロク、今日もありがとう」 システムがシャットダウンするまでの間、臣人はロクの頭を撫で続けた――

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