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第9話
いつも使用している潤滑液が、まだ硬く閉ざされている蕾へと垂らされる。
「ん・・・・・・」
その冷たさに、臣人の霞かかっていた意識が覚醒し、後口を弄るロクの姿を捉えた。
(そうか、まだ途中・・・・・・)
アナルセックスの終了までが1回として設定してあるので、臣人から『今日はもう終わり』だと言わなければ、アナルでイくまで行為は続く。
体は少しだるさが残るが、もう少し抱かれていたくて、されるがままに身をまかせた。
36度に保たれた、暖かいロクの指先が蕾を割って入り、出口付近をぐるりと一周撫で回す。
「っ」
反射的に体がびくりと跳ねると、ロクは一度手を止めた。
臣人の表情を確認し、大丈夫だと判断すると、奥まで指を進める。
前のバージョンでは、声に出さないと止まってくれなかったが、危険察知の能力も向上しているらしい。
いちいち言葉にしなくて良くなったのは、ありがたいかもしれない。
臣人は安心して、快感だけを追いかける。
ただ与えられるだけの行為に慣れきってしまった体では、もうきっと人間とのセックスはできそうにない。
臣人は左右に割り開かれた足で、ロクの体を撫でる。
人口の皮膚は傷一つなく滑らかで、そのさわり心地を楽しんでいたら、後口を慣らすロクの指が、突然前立腺をグリッと抉った。
「ひっ、」
「今の行動は『おねだり』で当たっていますか?」
「ちが、う」
首をかしげながら聞いてくるロクに、衝撃に身をくねらせながら応える。
「今のは、スルーして良いから・・・・・・」
「わかりました。ごめんなさい、痛かったですか?」
「大丈夫」
痛くないと、返事をもらったロクは指の動きを再開させる。
今度は臣人の敏感な部分を狙って、緩急をつけながら抉るように。
「ん・・・・・・んっ、ふっ」
弱いところを集中的に抉られて、下腹部に熱が集まる。
一度開放されて萎 んでいたペニスは再び硬さを取り戻した。
前立腺を掠めるたびに苦しそうに震えるそれを、ロクは手のひらで包み込み、後口の指の抜き差しに合わせて上下に扱く。
「ひ、あ、あっあっ!」
臣人はせり上がる射精感に、背をのけぞらせ、両手でシーツを握り締めた。
限界まで腰を浮かせてこれ以上逃げ場が無いのを分かっていて、ロクの指は臣人の敏感なしこりを更に抉りあげる。
「――――っあ――!!!」
そのままペニスの根元を前後に揺すると、臣人は頭を仰け反らせながら精を放った。
「っは、はあっ、は・・・・・・?!」
吐精の際に止めていた呼吸を整えるのに専念していた臣人は、アナルに指ではない熱い物を感じて薄く目を開く。
そんな臣人を見つめながら、ロクはその後口に熱く温度を上げたペニスを容赦なく突き入れた。
「っ・・・・あっくっ――!!!」
臣人は内臓を押し上げられる衝撃に目を見開き、背をしならせる。
イったばかりの敏感な体は、筋肉が弛緩して柔らかく、熱く硬いそれを易々と受け入れた。
「はぁっ!あっ、ロク・・・・・・っも、今日は無理っ・・・!」
懇願する言葉は拒否として処理されなかったのか、腸壁を抉る律動は止まることなく臣人の体を跳ね上げる。
「あっあっあっ・・・ぐっ」
もはや言葉を紡ぐこともできずに、手が白くなるほどシーツを握り締め衝撃に耐える事しかできない。
ロクは臣人の浮いた腰を両手で掴み、ベッドに沈めながら、その体内を膀胱まで届くほど深く味わう。
そのたびに臣人の下腹部はビクビクと痙攣し、萎えたペニスが震える。
はくはくと酸素を求めてゆるく開閉する口の端から唾液が漏れて、頬を伝う様を、ロクはうっとりと眺めた。
そんなロクの表情に気づくはずもなく、臣人はただどこからか迫ってくる快感に惑 う。
すでに二回射精したペニスは立ち上がる事無く萎えているのに。
これ以上イけない筈なのに。
どこからかせり上がってくる何か。
それが何か分からずただ快感に涙を零す臣人に、ロクは律動を緩めないまま覆いかぶさる。
シーツを握り締める両手を背中に回させると、臣人はしがみつくようにロクの体を抱き寄せた。
「大丈夫だから、イっていいよ」
ロクが耳元でやさしく囁く。
「あっうっ、い、いく・・・・・・って何が・・・・・・っあっっ」
射精でしか快感を得たことが無い臣人は、精を放たずにオルガズムを体感した事は無い。
ロクは動揺する臣人の背中をやさしく撫でる。
「あ、ぅっん、なにか、おかし・・・・・・っ」
「だいじょうぶ、怖くないよ、臣人」
下半身は未だじんじんと疼くが、ゆっくりと囁かれる聞きなれた声に、徐々に不安が取り除かれる。
早鐘を打っていた鼓動が少し落ち着いたのを見て、ロクは腰の動くスピードを上げた。
「あっ!あつっ、んぅっう!!」
再び駆け上る快感に、臣人はロクの背をかき抱くように引き寄せる。
律動にあわせてグチュグチュと音を立てる接合部が熱く、押し上げられる腸壁は燃えるようで。
「ひっ、んっ、うぅっ、うぁっあ、あっあっ!お、かしっく、なぁっあ!あんっ!」
荒い呼吸と共にもれる声は、だんだんと速度を増し、のどがひくひくと上下する。
ギシギシとスプリングが悲鳴を上げる。
ロクの背を掴む手に力が入る。
「ひっ?! あっ!!」
快感から逃げようとひねる腰をロクの手が捉え、動かないよう固定された。
そのままペニスが抜けてしまいそうなほど腰を引き、前立腺を抉りながら根元まで突き入れる。
そうすると、脳天にまで響くのか、臣人の仰け反った頭ががくがく揺れ、口の端からとめどなく唾液がこぼれた。
「はっ・・・・・・あ!」
それを何度か繰り返し、最後に突き入れたまま腰を上下に揺さぶると、臣人は仰け反らせたままの頭をシーツに擦り付けるようにして、絶頂に達した。
「んっんっんあっあっあ、っ――・・・・・・っっ!!!」
初めての射精を伴わないオルガズムに、目の前でバチバチと光がスパークする。
ビクビクと収縮する下腹部の筋肉が快感の大きさを物語り、未だに去らない射精感をシーツに体をこすり付けることで逃そうと、体をしならせた。
そんな臣人の中からペニスを抜くと、ロクは未だ震えるその体を抱きしめる。
「後は僕に任せて。おやすみ、臣人」
囁かれた言葉に細く息を吐く事で応えた臣人は、ロクの腕の中で意識を手放した――。
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