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Ⅰ 愛の巣で朝食を②
俺はどこで寝ればいいんだっ
シングルベッド1台、なんて~
床の上かっ
新聞紙敷いて段ボールの中かっ
ハルオミさんはαで、俺はΩ
以前はαの家畜扱いされていたΩであったが、ハルオミさんの政治活動の甲斐あって、Ωの人権と社会的環境はずいぶんと改善された。
個人識別データによる国家管理制度は廃止され、 種の保存と繁栄の名のもとに、犯罪を黙認しΩ差別を助長したSSLU (second sex liberty union)から日本は脱退。
今では首輪を付ける事なく、Ωもα・βと同様に、堂々と街を歩けるようになった。
日本は変わりつつある。
それなのにっ
「あなたはいまだに、Ωを虐げるのか」
Ω政策融和派だろう!
融和派とは名ばかりなのか。
陣頭に立ってΩ解放を説いていた、俺の見てきたあなたの姿は偽りだったのかッ
俺を床で寝かせるなんて……
家畜扱いも甚だしい。
「酷い」
「酷いのは君だろう、ナツキ」
「俺がどうして酷いんだっ」
「夫の意見を聞こうともしないじゃないか」
なにを聞けというのだ。
「妻を床で寝かせる夫の意見なんか、聞く耳持たないっ」
持ちたくない!
……サファイアの瞳に射した陰に惑う。
「……どうして、私が君を床で寝かせるんだい?」
「言い訳か、見苦しいぞ。ベッドが1台なら、床で寝るのはΩの俺だろう!」
「床か……いいね」
ほら、やっぱり。ハルオミさんはΩの俺を虐待するんだ。
「君と繋がりながら、床を転がって、主導権争いするのも悪くない趣向だよ」
「………………へ?」
繋がる?
床、転がって……主導権?
趣向……
「ハルオミさん?……なに言って」
答えを受け取る時間は与えられずに、ふわり
「わーっ」
足が床についてない。
体が宙に浮いているゥゥー★
今にして思えば。
これが、俺の受け取ったハルオミさんの答えだったんだ。
北欧デザインの家具売場の展示ベッドの上、ゴロンと仰向けに寝転んだハルオミさんは、俺の股を開かせて自分の体の上に俺を横たえた。
「ナツキ、私達の関係はなんだい?」
「……夫婦…だけど」
「正解だよ」
サファイアの中の淡い光を、愛しそうに細める。
「私達は、アッツアツ ホヤホヤの新婚さんだ」
……アッツアツ ホヤホヤ…って~
ハルオミさん、死語です。
「夫婦は一心同体!」
「わァァッ」
手を引っ張られた俺は、跨いでいるハルオミさんの上に崩れ落ちた。
俺の胸とハルオミさんの逞しい胸板が、ピタリくっついてる。
「騎乗位だ」
「………………へ?」
「君が私の上になって繋がるんだよ」
「はいィ~?」
「夫婦は一心…同体!!だからね」
ギャアァァーッ!!
ハルオミさんっ
あなたは、あほかーっ
『同体』を主張するんじゃないッ!
ここは家具売場の展示ベッドで、公共の場なんだァッ
公衆の面前なんだァァァーッ!
背中に回された腕が動かない。
頑強な力が、ハルオミさんの上に俺の体を縫い止める。
ハルオミさんを跨いで、胸と胸をくっつけた体が、ハルオミさんから離れられない。
ドクン、ドクン
鼓動が熱い。
ドクン、ドクン……
心臓の音、ハルオミさんに聞こえてしまう。どうしよう。
ドクン、ドクン……
ハルオミさんの首筋にうずめた顔、上げられない。
頬が火照って、耳まで真っ赤だ。
ぎゅっと腕の中に抱きしめて、心音の速さをくすぐる声が……
……トクンッ
規則正しい心拍数を狂わせる。
「君のベッドは私だよ」
俺の体を少し引き上げて、耳元をに這わせた低音
チュッ
唇が耳朶を食 んだ。
………俺の夫は意地悪だ。
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