4 / 292
Ⅰ 愛の巣で朝食を③
パクリ
「ヒャアっ」
ハルオミさんが俺の耳、食べてるぅーッ!
「真っ赤に熟れた苺かと思ってしまったよ」
俺の顔、耳まで真っ赤だ。
でも、だけどっ。
真っ赤にさせた元凶は、ハルオミさんだ。
クイーンサイズのベッドじゃなければ、俺の心臓は破裂してしまう。
毎日ピッタリくっついて夜を過ごして、ハルオミさんに抱っこされて朝を迎えるなんて……
心臓が幾つあっても足りない。
シングルベッドにこだわるハルオミさんを、どうにか無理矢理にでも説得して良かった……と、つくづく思う。
「ハ、ハ、ハルオミさん、今日は地方の遊説だって」
話題を変えよう。
これ以上赤面して、ドキドキする心臓が、口から飛び出したら大変だ。
「そうだね、ジリリ」
「なんでベッドの中にハルオミさんが?」
「君の夫だからだよ、ジリリ」
それ、さっき聞いた。
「遊説行かなくていいのか?」
「立候補者の応援演説だよ。私の人気で当選しても、国民から信任を得た事にはならない。そうは思わないかい?ジリリ」
確かにな。
候補者は政策で国民の信任を得て、選挙に勝つものだ。
「じゃあ、なんでっ!」
ハルオミさんは昨日、『遊説に行く』なんて、俺に嘘をついたんだ。
「行くよ。今日ではないけどね、ジリリィ~♪」
やられたー★
俺の思考はまたもや、シュヴァルツ カイザーに操られた。
地方遊説が今日だと思い込んだ俺は……そ、そのっ、ハルオミさんに……明け方…まで~っ……付き合ったんだっ
俺と離れるのが寂しい……とハルオミさんが、深海の色をした孤独なサファイアの目を、斜に伏せるものだから。
すっかり信じ込んでしまった……
シュヴァルツ カイザーの人身掌握術にはまってしまった~★
通りで『見送りはいいよ』……なんて言う訳だ。
ハルオミさん、出掛けないんだから。
明け方まで付き合った、俺はっ……俺は~っ
「何発目かも分からないミルクをはしたなく滴らせて、陰毛を濡らして私を求めて、私の股ぐらに顔をうずめる君は、この上なく淫乱なワイセツ動物だったよ……ジリリ」
「言うなァァーッ!」
ハルオミさんのあほーっ
にやにやするなッ
いい男の顔が台無しだわっ
顔の筋トレしろ、顔の筋トレ!
………つか
さっきから、ジリリ……って。
語尾に『ジリリ』が付いてるんだけど、なんで?
『ジリリ』を付けるのが、いい男の流行りなのか?
αの文化は分からないな。
「ジリリリリィィ~」
「ヒャウ」
ジリリ言いながら耳舐めるなっ
変な振動がひだを撫でて……感じてしまう~
もうっ!
ジリリって、なんなんだ?
「目覚まし時計だよ、ジリリ」
「………………はぃ?」
「私の目覚まし時計、止めてごらん。ジリリィ~」
「ハァァァ~?」
朝っぱらから、なんの悪ふざけだ。
………無視しようかな。
「ジリリィ~」
ダメだ。
無視したら、一日中、耳元でジリリ言われる。
ジリリで鼓膜が馬鹿になる。
………ハルオミさん、ちょっと鬱陶しい。
目覚まし時計なんだから、停止ボタンを押せば止まるんだろう。
ハルオミさん目覚ましの停止ボタンはどこだ?
「ここか?」
「ジリ…ン」
やった。人差し指で押さえたら、ベルが止まったぞ。
ハルオミさん目覚ましの停止ボタンは、唇だった。
「ジリリリリィィ」
「えーっ」
指を離したら、目覚ましが再起動してしまった。
唇ボタンじゃなかったの~?
「間違えると、君には罰を受けてもらうよ。ジリリィ」
パクっ
指をハルオミさんに食べられたぁ~!!
ともだちにシェアしよう!