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Ⅰ 愛の巣で朝食を 29
「誤解だっ!」
ユキトは運命のαで、俺の恋人。
アキヒトは自称・運命のβで、俺の恋人。
戦争によって、我が国の人口は激減した。
各県主要都市の過疎化は留まる事を知らず、α・β・Ωの人口比率が崩れて人口減少に歯止めがきかなくなった日本で、今や受精能力を有するΩは超稀少種となっている。
裏社会では、Ωは高値で取引されている。日本のみならず、世界各国で不当な婚姻及び、人身売買が横行している。
闇市を検挙し、Ωの人身売買撲滅に各国が躍起になっているが、依然、世界規模の組織犯罪の根を絶やす事ができない有り様である。
混沌とする世界情勢の渦中で、日本は犯罪根絶のための政策を、世界に先駆けて提言した。
新しい家族のあり方である。
Ω生殖保護法を成立させたのだ。
α・β一人に対し、一人のΩしかあてがわれないから、Ω不足に陥る。
ゆえに社会の構造が乱れて、人身売買が後を絶たないのだ。
それならば。
新しい秩序を構築すればいい。
α・βでΩを共有すれば、Ω不足が解消し、人身売買の撲滅にも繋がると考えた日本政府は、一夫一妻制を取りながら事実婚を認めた。
平たく言えば、愛人を許可したんだ。
Ωは正夫一人と、愛人二人まで婚姻できる権利を法律で認めている。
俺の正夫である第一夫は、ハルオミさん。
愛人枠の第二夫がユキトで、第三夫がアキヒト。
愛情順じゃなくて、単に夫の名乗りを挙げた順。
但し、二人の愛人は自分を愛人だとは思ってないけれど。
俺には、ハルオミさんという夫がいながら、二人の恋人がいる。
俺達の四人の関係は、ハルオミさんも新しい家族の形として認めている事なんだ。
その証は、俺達の結婚指輪だ。
ピンクゴールドの台座には、4石のダイヤモンドがはめられている。
中心のダイヤを囲む3つのダイヤは、3人の夫を表してるんだ。
ブルーダイヤが、ハルオミさん
ブラックダイヤが、ユキト
イエローダイヤが、アキヒト
瞳の色がイメージカラーになっている。
舞い降りた優しい手が手を取って……
左手の薬指のリングに、ハルオミさんが口づけた。
「君は、私だけのものじゃないからね」
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