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Ⅱ 瞳の蒼⑲
「………ダメ…だ」
俺はハルオミさんの妻としての役目を果たせていない。
料理は上手くできない。
家事はハルオミさんに手伝ってもらっている。
家の中でもたくさん助けられてる俺は、外でも役に立たない。
副総理のハルオミさんを支えているとも、到底言い難い状況だ。
ハルオミさんの妻になれていない俺が、子育てなんてできないよ……
「無理強いさせてしまったね」
ポンポンっ
大きな掌が降ってきた。
「もう少しだけ待つ」
ハルオミさん!
もう少しって、いつまでなんだ。
その期限までに俺がちゃんと妻らしくならないと、俺は……
(ハルオミさんに見限られてしまう)
妻の役割ができない俺なんかよりも、家事もできて美味しいご飯も作れる有能なΩがいいに決まってる。
どうしよう……俺……
頑張るから。……って、伝えないと。
それとも子供を産む。……って言った方がいいのか。
ハルオミさんは子供が欲しいから、その方が喜ぶだろうか。
俺を許してくれるだろうか……
「あのっ」
呆気なく。俺の髪から、あなたの手が離れていく。
こんな事をしている間にも、ハルオミさんの与えてくれた『もう少し』の期限が、刻一刻過ぎている。
「どうかしたかい?」
せっかく、ハルオミさんが聞き返してくれたのに。
「……なんでもないよ」
緩く首を振る事しかできなかった。
怖いんだ……
俺は弱くて……弱虫で。
ハルオミさんの本音が聞き出せない。
ほんとうはもう、俺の事なんか嫌気が差して。別れたいって思っていたら、どうしよう。
背中の体温が近くて……遠い。
「ナツキ?」
「ちょっと、おトイレ」
「もうすぐ出発だから、早く戻ってくるんだよ」
「……はい」
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