61 / 292
Ⅱ 瞳の蒼 23
唇はハルオミさんだ……
俺、ハルオミさんに口づけされている。
心臓がバクバク悲鳴を上げている。
破裂しそうなくらい、胸が苦しい。
背中の温もりが剥がされた。
ユキトから離されて、ハルオミさんの腕に抱きしめられている。
……俺、ハルオミさんに独占されている。
「君を触らせたくない」
濡れた唇が耳朶を這った。
「君に与える選択権は一つだ。私を選べ」
「ハルオミさん……」
「余裕のない夫なんだよ」
初めて見た。
揺れる瞳孔で俺を見つめるあなたを……
普段はなにがあっても、動じる事なんてないのに。
「……俺……ごめんなさい」
「私にも非はある。しかし、少しだけ君を叱るよ。いいね」
こくりと頷いた。
……ハルオミさん、俺のこと好き?
少しだけ視線を持ち上げる。真っ直ぐ、あなたを見るのが恥ずかしいから。
「かなり、きつく叱った方がいいのかな」
「えっ……」
なにか言った?ハルオミさん。
「なんでもないよ。ただ、フィジ=ネイヴィブルに着くまで、ずっとお説教するかも知れないね」
「うそ」
「夫を疑ったね。お説教だよ」
俺、ハルオミさんの機嫌を損ねる事言ったか?
もしくは思った?
シュヴァルツ カイザーに思考を読まれた可能性がある。
「お説教が嫌なら、私の口を塞げばいい」
俺の手を持ち上げて、赤い舌がペロリと人差し指を舐めた。
「指ではなく、君の唇で」
そそそっ、そんな!
「但し、それをした時は君からの『おねだり』だとみなす。容赦しないから、覚悟するんだよ」
「ナっ」
鼓動がドクンッと高鳴って、言葉を失う。
サファイアの蒼の瞳に、言葉を奪われてしまった。
余裕のない夫だなんて嘘だ。
こんなに俺を翻弄して。
(ハルオミさんの嘘つきー!)
「お説教しようか。それとも、待ちきれずにおねだりかな?」
やっぱり、シュヴァルツ カイザーに思考を読まれてるっ
「ユキトのいる前で、なんて事言うんだァーッ」
………………そうだ、ユキト。
俺の背後にはユキトがいたんだ★
きゅっと、後ろから手を握られた。
「お説教が嫌なら、コックピットに来ればいいよ」
………それって、どういう事だ?
「フィジ=ネイヴィブルまで、快適な空の旅を約束する。俺が操縦を務めるよ」
ええぇぇぇーッ!!
にこり、と微笑んだ秀麗な笑顔に俺は固まった。
聞いてない!!
飛行機の操縦が、ユキト
俺とハルオミさんのハネムーンに、弟で恋人で第二夫のユキトが同行する。
これって、滅茶苦茶マズイんじゃ~♠
ともだちにシェアしよう!