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Ⅱ 瞳の蒼 24
「聞いてないよ」
「初めて言いましたので」
俺の手を握ったまま、ブラックダイヤが挑む目付きで睨んでいる。
「航路はプログラム済みだ。自動操縦で着く筈だけどね」
うっ、ハルオミさんも負けてはいない。
サファイアの蒼が凍りついている。
「フィジ=ネイヴィブルまで約9時間。なにが起こるとも限りません。悪天候や乱気流 に巻き込まれたら、どうなさいますか」
「操縦は私もできるよ」
「兄上は文民。操縦技術は軍所属の俺の方が上です」
ユキトはα-大日本防衛軍エースパイロットだ。
だが、それを言うなら。
「俺も操縦できるぞ」
Ω解放軍 統帥
シルバーリベリオンを忘れてないか。
愛機《荒城》で戦場を駆けた俺だ。
政府専用機の操縦だってできるさ。
「ナツキは黙ってて!」
「そういう問題じゃないよ!」
ユキト……
ハルオミさん……
二人の仲を取り持とうとしたのに。
なぜ、俺が二人から叱られなくちゃいけないんだっ
「理不尽だ!」
俺だって怒るぞ。
「理不尽なのは俺だよ。ナツキは俺の味方だって信じてたのに」
「俺はユキトの味方だよ」
「じゃあ、どうして操縦できるって言い出すんだよ」
「………操縦できるのは事実だ」
俺に迫る漆黒の目が怖い。なぜだっ。俺は「操縦できる」って、本当の事を言っただけだ。
お前に恨まれるような事したか?
「君は、ユキトの味方なのかい?」
ハルオミさん!
「ユキトの味方をするなら、私の敵に回るという事だよ」
なんでっ?
なぜ、そうなるッ
氷の双眸が俺に向けられている。
「俺は、ハルオミさんとユキト……」
「二人の味方なんて都合のいい言い回しはなしだよ」
うっ、先手を打たれた。
俺はただ、状況を収拾したいだけで。
「三人一緒で……」
「愛し合うのかい」
ち、違うッ
そうじゃない。
「私達二人に求められたいなんて、君は淫乱Ωだね」
そうじゃないんだってば!ハルオミさん!
三人一緒でいればいい……って。提言しようとしただけだ。
三人一緒が、どうしてそっちの話になるんだァーッ
俺がハルオミさんとユキト、二人を一緒に受け入れるなんて……そそそっ、そんな淫らなコト……キャーッ!!
「兄上より先に挿れたいな」
「キャーッ」
ユキト、当たってる。
お尻に固いの当たってる!
ヤる気出すなーッ
「ハルオミ★スペシャルじゃ足りなかったかい?」
「足りてる!」
十分足りてます!
キャーッ、ハルオミさんのも当たってる。
前から固いのが当たってる。
「君を床上手にしたのは、私だよ」
………俺って、床上手なの?
「文民は関係ない。ナツキを悦ばせる技術は遥かに私が上だ」
悦ぶって~……そ、そういうコトだよね……キャーッ!!
ハルオミさん、自信持ってる。
比べられる対象が少ないから、俺には分からないよぅー。
「いっぱい喘いでいるだろう?」
「~~~」
否定できない。
……ムカっ
背中で心の声が聞こえたようだが。
「ナツキ、コックピットに行くよ」
わっ、ユキト。
「ナツキ、キャビンに戻るよ」
わっ、ハルオミさん。
「ワワっ」
後ろからユキト
前からハルオミさん
二人に抱きしめられて、俺、サンドイッチになってる。
恥ずかしい。
「ナツキは俺を選ぶよね」
「私を選ばないなんて選択肢は与えないよ」
ぎゅうー
ユキトとハルオミさん
二人に挟まれて、二人の腕の中に包まれている。
嬉し……くなんかない。かなり怖い状況だ。
二人が俺を離してくれない。
チュッ
チリッ
唇を落とした痕が微かに痛んだ。
ユキトとハルオミさん、二人同時に右と左。口づけをした場所に印をつけた。
第一夫と第二夫、二人が俺を自分のものだと主張している。
「あぁ、そうか……君に決めてもらえばいいんだね」
なにを、だ?
「君は私達の妻だ。君が決めるべきだよ。ユキトについてきてほしいか、日本に残るかを」
あなたは、なにを言い出すんだッ
「ナツキが言うんなら異存はない。お前に従うよ」
ハウン……ユキトがうなじを舐めた。
どちらを選んでも………
「ナツキ、どうするんだい?」
「ナツキが大好きだよ。俺の奥さん」
俺は、どちらかから責められるんだー。
「ねぇ、どっち?」
「どちらだい?」
助けてーっ!!
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