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Ⅱ 瞳の蒼 30

「……そういう事か」 声が頭上を掠めた。 「理解したよ」 ハルオミさんに抱きすくめられている。 赤くなった顔を胸にうずめて、ぎゅっとされている。 ほんとうに、ハルオミさんに独占されているんだ。 「君が、私達のシークレット サービスだね」 モニターの声が頷く。 『俺は統帥の剣です。お守りするのは俺ですよ』 秘密にされていたのは、ハネムーン。 フィジ=ネイヴィブルの外遊に関しては政府の決定事項であり、必要な組織が先だって動くのは当然だ。 俺達の身辺警護(シークレット サービス)は、アキヒト あらかじめ情報をつかんで、フィジ=ネイヴィブルに前乗りした事にも合点がいく。 否。情報をつかんだから、俺達のシークレット サービスに名乗りを挙げたのか? 『統帥。外遊先ではずっと一緒ですね♪』 アキヒト。お前も公務だからな。 ハルオミさんの外遊に同行するのは初めてだから、シークレット サービスも初めてだ。 ……まさか、24時間警護……なんて事ないよな。 「24時間警護するだろうね。間違いなく、彼ならば」 「ハルオミさん!」 心配事を肯定しないでくれ。 『24時間警護は当然でしょう。大事な統帥なんですから』 アキヒト、乗っかるな! 『肌身離さず、統帥を警護しますね♪』 肌身離さずの使い方、間違ってるぞ。 「私も居るのだけれどね。更に言うなら、私も警護対象だ」 『そうでしたね。副総理の魔の手から、統帥をしっかり警護します』 「違ーう!」 アキヒトのシークレット サービス、間違いだらけだぞ。 いいのか? 「よくないよ!」 「ユキトっ……ワッ!」 「24時間警護なら俺がする。パイロットとして同行するんだ。そのままシークレット サービスにまわるよ!」 「そういう問題じゃ……ワワッ」 24時間警護はしなくていいんだー! 「ナツキを肌身離さず警護するから、安心してね」 お前達!肌身離さずの使い方、間違っているぞ! 警護とは、少し離れた所で行うものだ。 ピッタリくっついていたら、できないだろう。 ユキト、今から肌身離さずになってどうする? 「二人きりの外遊が、こんな事になるなんてね。もっと情報統制すべきだったよ」 ハルオミさんは十分にしてくれたよ。 外遊は公務なのだから秘密裏に行う事は不可能だ。 公務なんだから…… 「外遊に行かない……なんて、言わないよね」 ハルオミさん? 「………行きたくないな」

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