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Ⅱ 瞳の蒼 33

理解してるんだ。 言葉の裏はないって事。 『もう少し』は、出発までの間。 離陸の際は、着席してシートベルトを付けなくてはいけないから、こうしてハルオミさんの温もりに触れる事はできなくなる。 離陸までの『もう少し』の間、俺に触れていたい。……って、ハルオミさんは言ったんだ。 でも…… 分かっているのに…… だけど…… あの時の言葉が重なる。 ……『もう少しだけ待つ』 そう言った、もう一人のあなたが俺の脳裏で囁くんだ。 ハルオミさんの子供を産む事を拒絶したから。 『もう少しだけ待つ』とハルオミさんの言った『もう少し』の期間は、いつまでだろう。 期間が切れたら、俺は……… 体温が青ざめていく。 体が急速に熱を失う。 冷えた指先で、あなたの肩を手繰り寄せた。 『もう少し』このままでいたい。 あなたの子を産む。……って言ったら、答えは簡単なんだけど。 怖いんだ。 子を産み、育てる勇気がなくて。 こんな曖昧な気持ちのままで、子供は産めない。 あなたの気持ちに応えられない。 俺は戦争の首謀者で、多くの命を戦争に駆り出して、戦争で命を刈って…… こんな俺が家庭を持って、子供達に囲まれて幸せになったら、ダメだよな…… 戦争で命を刈ってきた俺が、どうやって命を育めばいいのだろう。 未熟な妻で、 人の子の親にもなれず…… それでも夫となってくれたあなたを、せめて………… 甘やかす事くらいは許してくれるかな。 甘やかす事しかできなくて、ごめんね……

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