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Ⅱ 瞳の蒼 35
スーツの袖をきゅうっと握っている。
これじゃあ俺、小さな駄々っ子みたいだ。
……でも。離したくないよ。
『もう少しだけ』の、この時間がずっと続けばいいのに。
俺の掴んでいる袖とは逆の手が、髪を撫でる。
頭の上に降りて、何度も何度も、俺を慈しんでくれる。
なんだか懐かしいな……
もしかすると。
以前にも、こんな事があったのかも知れない。
ハルオミさんとユキトと一緒に暮らしていた昔。
俺が覚えていないだけで……
ハルオミさんは、あの頃もこうして俺を……慰めてくれていたのかなぁ。
胸の奥がくすぐったくて、じん……と痺れて。
柔らかな優しさの塊に、胸が押し潰されてしまいそう。
喉がきゅっと絞めつけられて。
ヤバい。
俺、泣きそう。
こんな所で泣いたら、ハルオミさんに変に思われる。
楽しいハネムーンに行くんだから。
幸せいっぱいの妻じゃないといけないのに。
このまま抱きついてしまおうか。
そしたら、ちょっとくらい泣いたってバレないかも。
……ダメだ。
ハルオミさんのスーツに染みがついてしまう。
泣かない方法、見つけないと。
だけど。
俺の頭を撫でるハルオミさんの手、振り払うのは不自然だ。
それに……振り払いたくない。
記憶のない記憶に語りかけてくれているみたいで。
ハルオミさんの優しい手が好き。
どうしよう……
俺、どうしたら……
「ワーッ!」
体が突然、後ろに引っ張られた。
「俺も甘やかしてね♪」
どうしてお前は空気が読めないんだーッ!
「ユキトー!!」
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