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Ⅲ Attention, please!⑨

あなたがいる。 あなたの腕が俺を包んで、強引に引き寄せる。 「逃がすつもりはない」 声音が奏でた。 耳朶を吹いた熱に、心音が高鳴る。 「でも」 厚い胸板を押し返した。 あなたのスーツ、汚してしまう。 昂りのお汁が止まらないから。 「夫婦で嘘はいけないよ」 衣擦れの音と一緒に、屈強な腕がグイッと腰を抱き寄せる。 「君の口づけは偽りかな」 そんなわけない! 「俺はっ」 ハルオミさん 「あなたをっ」 「だったら私から逃げるな」 怜悧な眼光が鼓動に突き刺さって、心臓が熱を帯びる。 「君は、私を選んだんだよ」 頑強な腕が俺を捕らえて離さない。 「君が、私を逃すな」 腕の温もりも。 額にかかる吐息も、全部。 「私は君の物なんだ」 「だけどっ」 くっついていたら…… 「あなたを汚してしまう」 「いいじゃないか」 蒼い瞳の奥がクスリと笑った。 「言っただろう。私は君の物なんだから、汚していいんだよ」 ハルオミさんの黒の高級なスーツ…… 俺の、白いので…… 「………腰振って」 低くささめく声に、フルリと揺れる。 心も、体も。 「そうだよ。もっと振ったら気持ちよくなれる」 布地の下。 ハルオミさんの股間が固い。 俺の昂り、ユキトに握られたままで。 手の中から少しだけ飛び出した先端を、硬直した布地にこすりつける。 「はぅ」 イイ! ハルオミさん固いの、好き。 先っぽを押しつけて、こすって、快感を求める。 固くて熱いのが布の下にあるかと思うと、それだけで興奮してしまう。 「俺のっ」 ハルオミさんの固いのは俺の物。 「そうだよ、君だけの物だ」 「俺のハルオミさんの……」 腰を回して、前後に振る。 ユキトの手に竿が囚われているから、包皮からのぞいた亀頭しかこすりつけられないのが、もどかしい。 「ハルオミさんの~」 「私の、なんだい?」 「俺の好きな固いやつ」 「固い何かな?」 ユキトの手の中で、ドクドク跳ねる。 「言ってごらん。言いたいんだろ?」 首を横に振りながら、腰も一緒に振る。 「君は、私の何が好きなのかな?」 喉を伝った指が顎を持ち上げた。 「君の口から聞きたい」 蒼い光が瞳を穿つ。 「君の好きな私の場所を言うんだよ」 逆らえないんだ…… あなたの優しくて強引で 甘く切ない声に。 俺の理性は、あなたの物にされてしまった。 「……俺ね」 「なんだい?」 「好きなの」 「何がかな?」 「ハルオミさんの………」 チロリ、と赤い舌が唇を舐め取る。 「聞こえないよ」 舌が唇をつつく。 「大きく開いて……そうだね。キスする時、君はこうやって私の舌を受け入れるじゃないか」 からかうように、唇を啄んだ。 「もっと大きな口を開こうか。……そう。そうして言うんだよ。ユキトにも、アキヒト君にも聞こえる声で」 舌先が下唇を舐めた。 「私のどこが好きかな?」 「………………ん、こ」 俺ね…… 「ハルオミさんの……」 「私の?」 「ちんこ、好き」 大好き。 とっても好き。 すごく好き。 おっきくて、固くて、俺を虐めるから。 「ハルオミさんのちんこ、好き」 竿に浮き出た血管も。 段差のくっきりついたカリも。 いっぱい、せぃし出してくれる鈴口も。 蕾にねじ込んでイイトコロ突いてくれる亀頭も。 全部好き。 大好き。 「ハルオミさんのちんこ、俺の物なの」 「……そうだよ」 蒼い眼差しが整然と微笑んだ。 「君以外にはあげないよ」 君の物だ…… 遠慮はいらない。 「君で、私をいっぱい汚すんだよ」 ………チュッ

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