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Ⅲ Attention, please!⑩
黒いスーツがグショグショ……
先っぽだけ、こすりつけて。
ユキトに囚われた手の中。唯一、外気に触れている先端が貪欲に快楽を欲しがっている。
透明な液体が後から後から垂れてくる。
穴から溢れる、がまん汁が止まらない。
ハルオミさん……
「もっと、おいで」
逞しい腕が俺を引き寄せる。
離さない。
「鈴口、気持ちいいかい?」
「イイ」
「亀頭は?」
「イイ……イイのっ」
ユキトの手の中で、おまけに皮も被った状態だから半分も出ていない。
俺……小さいから。先っぽだけが辛うじて、外にのぞいている状態だ。
ソレを必死に擦り付ける。
ハルオミさんのアレに押しつけて、腰を回す。
ハァハァハァハァッ
体が熱い。
肌が汗ばんでいる。
俺の先走りで濡れてグジュグジュのスーツの下に、ハルオミさんの昂りがある。
このままじゃ、白いのが出てしまう。
だって……
今すぐイキたい!
白いので、ハルオミさんのスーツを汚してしまう。
でもっ。
腰が止まらない。
「ア、フゥ」
いっぱいこすらなければイケない。
上下に擦って、それでも足りないから前後に突いて、腰を回す。
お願い……
ハルオミさん……
「出てきて」
ハルオミさんのおっきいのと、こすり合わせたい。
「困った子だ」
ちいさく笑った吐息が耳に吹く。
口の中に中も唾液でグチョグチョになっている。
飲み込む余裕もないんだ。
涎を垂らして見上げた俺の目に、微笑むあなたが映った。
「ハゥハゥ……おっきいの、好きだからァ」
股の間の小振りのソレを、布地の下で膨張している欲望に擦り付ける。
なのに。
ハルオミさん、ちょっとだけ腰を動かしたきり、仁王立ちしている。
「俺の、キライ?」
ちっちゃいから興奮しない?
でも俺の……これで限界まで膨らんだんだ。もう大きくなれない。
先端でテントを張ったスーツをノックするけれど、ハルオミさんが出てきてくれない。
蒼い眼差しが曖昧に微笑んでいる。
どうしよう……
俺は、こんなにもあなたが好き……なのに。
「少しは気づけたかな」
口許についた唾液を指の腹が撫でる。
「焦らさないと気づかない。君は、私を翻弄する悪妻だね」
……ハルオミさん?
「そろそろ私も限界なんだ」
触れた指が鼻先をつっついた。
「ほんとうは、泣かせたいくらい焦らしたいんだよ」
「意地悪……」
「これでも、君には優しくしているつもりなんだけどね」
「ハルオミさんの優しいは、意地悪だ」
「嬉しいクセに」
柔らかな光が帯びた艶かしい藍の双玉が見下ろす。
心臓がキュンっと鳴いて、ドキドキしている。
口では素直になれない分、鼓動が大好きだって言ってる。
あなたの事……
あなたも俺の事、好きですか?
似た者夫婦の俺達は、どうせ聞いたって素直に答えてくれないんだ。
だから、胸に聞いてみよう。
あなたの鼓動、ドキドキしてますか?
俺の事、大好きだって。
心臓で伝えて欲しい。
「………愛してるよ」
えっ…………
「どうしても、君に伝えたくて我慢できなかったんだ」
思考、読んだ?
シュヴァルツ カイザーは卑怯者だ。
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