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11/25双子の日即興SS♥《断章》副総理だって主夫をする!①
んにゅ~……むにゃむにゃむにゃ~
(これは、そう)
俺がハルオミさん家に引っ越してきたばかりの頃のお話。
(俺は花嫁修行中)
……って事になるのかな?
既にハルオミさんの妻にはなってるんだけど……事実婚というやつで。籍はまだ入れていない。
俺の夫は日本国 内閣副総理大臣。
シキ ハルオミさんの毎日は多忙だ。
少しでもハルオミさんの力になりたい。
そんなふうに思ってはいるけど、どうしたらいいのか分からない。
政治は俺にとって火星よりも遠い世界で……
そんなある日。
突如として事件は起きた。
俺は誘拐されたんだ。
よりにもよって、ハルオミさん自身に……
『ナツキ……』
優しく、優しく呼んでくれた。いつも以上に。
ハルオミさんの指がハンカチを解く。
『開けてごらん』
真っ白なハンカチの上に、青く青く深い空。
雲の切れ間から流れた宵闇の明ける空のように……
ハルオミさんの瞳の色と同じ藍色の空に、俺の左目の色と同じ菫が咲いている。これだけでも素敵なインテリアになるんじゃないかな……っていうくらい可愛い小箱が現れたんだ。
ドキドキ、胸の高鳴りが押さえられない。
『震えているね』
暖かな体温が包んだ。
俺の手、あなたの手の中にそっと……握られて。
『一緒に開けようか』
私達の結婚指輪だよ。
二人で開いた小箱の中。
俺達夫婦の絆の証。
「ありがとう、ハルオミさん」
………………
………………
………………
ハルオミさん?
………………
………………
あの?
あれ?
「ええぇぇぇぇーッ!!」
指輪がない!!!
まさか★
一生に一度のプロポーズに、大事な指輪を入れ忘れた??
ハルオミさんに限って。
まさかっ
しかし、現に空っぽなんだ。
箱の中に指輪がない!!
『君の結婚指輪は預かったよ』
………へ?
『返して欲しければ、私の要求を飲みたまえ』
蒼い玲瓏が悪戯な微笑みを浮かべた。
『身代金は君の生涯だ』
それって、ハルオミさん?
『君の一生を私にくれないか。嫌だと言ったら……』
嫌だと言ったら?……
『君を拉致監禁する。日本国副総理は犯罪者だね』
チュっ
指輪のない左手の薬指に、熱い……高鳴る鼓動すら溶かすほどに熱い口づけが舞い降りた。
『今夜、私の部屋においで』
日付が変わって、夜が明けて。
明日も、あさっても。
これから、ずっと。
『私の家が君の家だよ』
……こうして日本国内閣副総理大臣は、誘拐犯になりました。
俺の生涯は日本の頂点に立つ政治家に合意のもとで、拉致監禁されたんだ。
世界一幸せな誘拐……
むにゃむにゃむにゃあ~
(俺はまだ夢の中)
ハルオミさん、俺を妻に選んでくれてありがとう。
世界一幸せな夫婦になろうね、チュっ
んー?
ハルオミさんの唇って、こんなんだったっけ?
妙な口触り……というか~
「フニャフニャ~」
「失礼な。私はフニャチンじゃないよ!」
「ギャっ」
どうしてっ?
ハルオミさんの声が背後の頭の上から降ってきたんだ?
ハルオミさんは俺が、ぎゅーってしてるのに??
……つんつん
ハルオミさんの頬っぺたつねったけど、反応がない。
……つんつんつん
もしかして、ハルオミさんまだ寝てる?
さっきのはハルオミさんの寝言か。
よし、つねってみよう。フフフ……
むぎゅ♪
……………………あれれ?
反応がない。
どうしてだ?つねり方が足りなかったか?
「優しくしてほしいな。私の分身だよ」
はい~?
どゆこと??
「君の抱きしめているそれ、私の等身大抱き枕だよ♪」
「ギャー!!」
バッチリ目が覚めた。
俺、ハルオミさん等身大抱き枕をぎゅむぎゅむしてるーッ
「ハハハ、ハルオミ…さんっ」
「嬉しそうだね?」
「だって、これっ」
「君の喜ぶ『ハルオミ添い寝♥ver.』だよ」
裸じゃないかァァーッ!!!
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