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《断章》副総理だって主夫をする!⑬

えええぇぇぇぇーッ!! そ、そ、そーッ 「そんな理由~~!!」 「そんな理由じゃない。大事なことだよ」 「でもっ」 「でも、じゃない」 ハルオミさんの眉間に皺が寄っている。 「大事なことだって言ったよね?」 「はい……」 声はとっても穏やかなのに、なんだろう。 心臓がバクバクする。 蒼い瞳から目が離せない。 少しでも視線を逸らしたら、たちまちのうちに飲まれてしまう。 サファイアの深海、奥深くに引きずり込まれるッ この有無を言わせぬ圧迫感…… 心臓を鷲掴む眼差し。 鼓動を熱くさせる瞳。 Ωの頂上に立つ、Ω解放軍 統帥の俺…… (シルバーリベリオンがッ!!) 気圧されるなんて。 戦いの陣頭に立ち、Ωを勝利に導いてきた俺は、戦場の貴公子。 俺の頭脳がαを畏怖させ、俺の存在にαは恐れおののいた。 彼がシュヴァルツ カイザーと呼ばれてたって、ハルオミさんは文民だ。一政治家だぞ。 日本国内閣総理大臣に、最も近い男 シキ ハルオミ ……といわれる所以(ゆえん)は、その実力が実質、国のトップであるからだ。 政界の辣腕は国内外が認めている。 オオキ首相を差し置いて、副総理のハルオミさんと縁故を繋ぎたい人間が大勢いる。 だが、俺だって。 Ωの頂上に君臨するシルバーリベリオン。 日本国頂上に立つ男に引け劣る事はない。 ハルオミさんが政界ナンバー1であるならば、俺はΩナンバー1だ。 「……正解だよ」 逞しい(かいな)に抱きすくめられて、ドキンッ 鼓動が高鳴った。 「君はΩ統帥シルバーリベリオンで、Ωの頂きに立つナンバー1。 私は、この国の政界実力ナンバー1…… シュヴァルツ カイザーだ」 首筋に熱い吐息がかかった。 「けれど、完全な正解じゃない。その答えは不正解だよ」 私は……… 「君の夫だ」 (かいな)が熱い。 抱きすくめられる胸の熱がドクドク押し寄せて、俺の心臓が火傷しそう。 「シュヴァルツ カイザーである前に、日本国副総理である前に…… 君の男だ」 君だけのナンバー1なんだよ。

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