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■節分SP■君に捧げる愛の歌②

「……俺、柊の枝に鰯の頭刺してくるね」 「もう作ったよね?」 「さっき作ったのは、ハルオミさんの分だよ。今から作るのは俺の分」 「夫婦は一心同体。柊鰯も君と私で一つでいいよ」 「でも」 「君は一体いくつ柊鰯を作るんだい?」 「あと20個くらい…かな」 「量産してはいけないよ。柊鰯で玄関が埋め尽くされてしまう。我が家がホラーハウスになってしまうよ」 シルバーリベリオンの思考の先を読むとは。 さすがはシュヴァルツ カイザーだな。 今回は潔く敗北を認めてやろうじゃないか。 こんな単純な戦略に引っ掛かるあなたではなかったな。 柊鰯でハルオミさんの気を逸らす策略は失敗だ。 (まぁ、いいさ) 今のうちに柊鰯で笑っていろ。 俺が次の一手を打っていないとでも思ったか。 あなたは既に、俺の手の中。 俺の掌で踊っているんだよ。 フハハハハハー!! 「ハルオミさん、そろそろお風呂入ってきたら?」 「あぁ、もうそんな時間か」 フッ、単純だな。 あなたは実に単純だよ。 この時間にお風呂に入ればどうなるかな? ゆっくり長めに湯に浸かって、体を拭いて髪の毛乾かして、湯上がりにフルーツ牛乳を一杯飲み干せば、時刻は零時だ。 時計の針は無情にも、明日を告げるんだよ。 フハハハハハー!! 残念だったな。立春に恵方巻きは食べない。 柊鰯にばかり気をとられて、目的を逸したな。柊鰯に惑わされたあなたは自滅するんだよ。シュヴァルツ カイザー!! (俺の頭脳が弾き出した戦略には、完全勝利という名の勝算がある) 否! 勝算しかない! さぁ、俺の掌で踊ってもらおうかァァーッ!! 《黒の支配者》がマリオネットになる時が来たのだよ。 「アヒルちゃん、いっぱい湯船に浮かべたよ」 マリオネットとなったあなたは、ウサギも同然🐰 獅子はウサギを狩るにも全力を尽くすのさ。 「ハルオミさんはアヒルちゃん、大好きだもんね!」 最後まで手は緩めない。 俺の仕掛けた策略という罠に捕らわれるがいい。 (シュヴァルツ カイザー!!) 「ナツキ」 愛しいあなたが俺の名を刻む。 「アヒルちゃんは名案だよ」 …………フフフ (堕ちた) 遂にシュヴァルツ カイザーが。 俺の頭脳が弾き出す計算に狂いはないのさ。 あなたはもう二度と這い上がれない。 湯船に沈むんだ。 アヒルちゃんと一緒にな! フハハハハハハー!! 「君は私が唯一この世界で愛するΩ妻だ。実に妙案だよ。いいね!」 ハルオミさんが喜んでいる。 アヒルちゃんは、あなたの気を引くために俺がばらまいた罠だとも知らずに。 (αとは可愛いものだな) 政界の実力者。陰で日本国を操る副総理と評されるあなたでさえも、俺の策謀にかかればこの通りだ。 クククククッ つくづく我が頭脳が恐ろしいよ。 プカプカ、アヒルちゃんと共にあなたは俺の掌で踊るんだ。 「……残念ながら、この計画には一つ欠点があるね」 「なっ」 ささめく透明な双眸の(いろ)は蒼。 見透かしていたというのか。 俺の策略を、あなたは。 「鬼は君だよ、ナツキ」 瞳の奥が低く微笑んだ。 「種まきの鬼は君だ」 ………………種まき? 「豆まきだよ、ハルオミさん」 「種まきだよ、ナツキ」 なぜだッ 柔らかなあなたの笑顔を目にした瞬間、ゾゾゾー 背筋に悪寒が走った。 「君は鬼だ。私から逃げてごらん」 言うが早いか、屈強な両腕の中に閉じ込められてしまう。 「種はぁ~外!種はぁ~内!」 明らかにおかしいッ 豆まきの掛け声がッ 「種まきだって言ったろう?」 当たってるー! ハルオミさんの脚の間にそびえる固いヤツ! 「種まき必須アイテムだよー」 ゴリゴリ♥ 種まきって…… 種まきって…… 「私達の五穀豊穣だ」

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