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■節分SP■君に捧げる愛の歌⑩
俺のお腹め!
腹の虫め!
なんてタイミングで鳴くんだーッ
「……恵方巻き」
ギャー!ハルオミさんがいらん事思い出してしまったじゃないかー♠
「そうだったね」
額に指を当て、首を傾げて視線を流す。
「恵方巻きを所望していたんだった」
無駄にカッコよさを垂れ流すんじゃない。
台詞と顔が合ってないぞ。
「果たしてそうかな?」
……ハルオミさんが悪い顔してる~
「私が丸かぶりしたいのは、この世の何を差し置いても譲れない恵方巻きだよ」
ゾゾゾー
なぜ悪寒が走るッ
「私が食べたいのは海鮮巻きだ。さぁ!タルタルソースはたっぷり用意しているよー!」
背筋を這い上がった、このとてつもない寒気は気のせいじゃない。
タルタルソース、タルタルソース~~
白い、白いソース………
「ギィヤァァァー♠♠♠」
額にかかる前髪を、指が払う。
「気づいてしまったようだね」
俺は……
君は……
「「シュヴァルツ カイザーの妻なんだーッ!」だよ♥」
夫婦は以心伝心なんだ………
(ハルオミさんのタルタルソースの正体が、俺には分かってしまう~)
そそそ、その正体は……
「種汁」
「言うな!」
あぁ、もうっ。この人はどうしてっ。顔はいいし、優しくて仕事もできて毅然としていて、夫として申し分ないのに。
配慮という名の思いやりを知らないんだーッ
「ナツキ……」
大きな掌が俺の頬を撫でた。
「私は政治家だ。日本国副総理大臣の職務にあり、実質我が国の頂に立っている。国民に情報開示する義務があるんだ」
あなたの手に頬が包まれた。
「タルタルソースは種汁だ」
「二度も言うなァァーッ!」
「家事分業は当たり前。良き夫は料理もしなくてはね。さぁ、海鮮巻きを作ろうか」
魅惑の双眸が降りてくる。蒼い蒼い欲情の波が瞳の奥で揺れている。
鼓動の高鳴りが押さえられない。
ドクンッ、ドクンッ
あなたに映る俺がいる。あなたは俺の心音まで見透かしているのだろうか……
秀麗な指先が下唇をなぞった。
「タルタルソース、お味見するかい?」
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