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【お正月♪】初詣はあまねく愛に包まれて⑤

「ナツキ。なに、ぼーっとしてるの」 「あ、うん。……あつッ」 ユキトに呼び掛けられて、甘酒一気飲みしようとした俺、なにしてるんだっ 動揺が隠せない。 「気を付けなければいけないよ」 心の内なんかいざ知らず、ハルオミさんが微笑んだ。 誰のせいだと思ってるんだ。 あなたがそんな態度をとるなら、目を合わせてやるもんか。 「おやおや?私の妻はご機嫌斜めらしい」 「……あ、はぅ」 口の中、ねっとり湿ったものにやらしく絡めとられる。 「処置完了だ。火傷は初期治療が大事だよ」 こんなの!治療じゃない! 「あっ、統帥。なにやってるんですか!」 動揺を隠せない俺から甘酒の湯呑みが取り上げられた。 「一気飲みはダメです」 俺……世話の焼ける統帥だ。 「副総理とのキスシーンなんか見たくありません」 そっちか、アキヒト! 「俺の」 甘酒がアキヒトの手に。 「あーっ」 俺の甘酒が~~ 「一気飲みはダメだって」 「いいんです。俺は。これで副総理とキスする口実はなくなりました」 ぎゅっ 不意に肩を抱き寄せられて包まれる。 「……手、まだ冷たいですね」 「そうかな?」 「はい。俺の手の方があったかいでしょ」 「あぁ」 「じゃあ、俺の手で統帥の手暖めてあげますね」 ぎゅっ 大きな手で強く握られて、アキヒトの体温を感じる。 ぎゅっ (……あれ?) 左手も体温に包まれてるんだけど~ 「こっちの手は俺が暖めてあげるよ」 ユキトの温もりが包んでいる。 「ありがとう」 ……でいいんだよね? 「俺の方こそ、ありがとう」 「愛人なんかにお礼言わなくていいんですよ、統帥」 うぅ、アキヒトがやっぱり拗ねてしまった。 けれど。そうすると? 「神様へのご挨拶も済んだし、君の体が冷えてしまうといけないね」 ハルオミさんと手を繋げない。 「帰ろうか」 俺は一人で、夫は三人。 当たり前なんだけど…… ハルオミさんは寂しくないのかな。 「どうしたんだい?」 こういう時こそシュヴァルツ カイザーになればいいのに。 (拗ねないの?……なんて聞けない) 肝心なところで、あなたは思考を読んでくれない。 俺……ハルオミさんに拗ねてほしいのか? (そんなの、ハルオミさんだし。大人のハルオミさんが……) 「君は分かってないね」 えっ……… 「なんでもないよ」

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