246 / 292

【お正月♪】初詣はあまねく愛に包まれて⑥

「なんでもなくない!」 「でも、ナツキ。頬っぺた膨らんでるよ」 つんつん (あー、もう。ユキト。つんつんするな) 「さっきから、なんでもない事ないと思いますけど」 つんつん 今度は左から頬っぺた、つんつん。 ユキト、アキヒト。俺の頬っぺたはお前達のオモチャじゃない。 俺達は夫婦だ。 夫婦に隠し事はいけないんだ。 ……なのに俺はハルオミさんの気持ちが分からない。 右手をユキトに。 左手をアキヒトに。手を繋がれて、楽しい初詣の帰りなのに。 前を歩くあなたの背中を追っている。 あなたの背中ばかりを追っている俺は、あなたの気持ちをつかめない。 未だにつかめずにいる。 ………………あ。 あなたが立ち止まった。 なんだろう? すごく懐かしい気持ちになる。 昔、俺はハルオミさんとユキトと暮らしていたらしい。 「らしい」というのは俺の記憶がないからだ。 もしかすると、以前にもこんな光景を見ていたのだろうか…… こどもがねだってる。 あのお面ほしい、って。 あっ、泣いちゃった。 向こうから走ってきたのは、お兄ちゃんかな? 真っ赤な林檎飴。 渡したら泣き止んだ。 良かった。 三人の兄弟が、パパとママに手を繋がれて小さくなっていく。 ……俺にも、あんな頃があったのかな? ねぇ、ハルオミさん。

ともだちにシェアしよう!