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【お正月♪】初詣はあまねく愛に包まれて⑦
記憶がないのは、悲しい事だ。
(俺じゃなくって)
ハルオミさんと、ユキト……
二人の記憶は、思い出で止まってしまう。
もう一緒に楽しいと感じない。幸せだとも思えない。
記憶が止まるんだ。
楽しい気持ちを、悲しみに染めて。
同じ時間を過ごしたのに、同じ気持ちを共有できないのは、そういう事だ。
楽しい記憶が、悲しい気持ちに変わってしまう。
(ごめん、ハルオミさん)
(ごめん、ユキト)
楽しい思い出を悲しくしてしまって、ごめん……
ハルオミさん
ユキト
「わっ」
突然、目の前が真っ暗になった。
なんで?
どうして?
なにも見えない。
「……君には、どのお面が似合うかな」
この声は……
(ハルオミさん?)
「これは……違うね。こっちかな?」
そもそもお面って顔を隠すものだから、似合うも似合わないもないと思うんだけど~
「あぁ、やっぱり。君には、これが似合う」
お面が似合う……って~
ハルオミさん、ひどくないか。
「これ下さい!」
店主に代金を払うや、ハルオミさんからお面を奪い取った。
「君も気に入ったんだね」
「違うよ!」
ハルオミさんの顔に押し付けた。
さっきまで俺に被せていた、天狗のお面。
どうだ、参ったか。
(俺よりも)
「ハルオミさんの方が似合ってるよ」
フフン♪
ハルオミさんが天狗になった。
「まったく、君は」
天狗が喋った。
「怒ったり、笑ったり……忙しい人だね」
フフっと天狗が笑った。
俺、天狗に子供扱いされてないか。
なのに、俺も笑みをこぼしてしまう。
(あぁ、そっか……)
泣き出しそうになった俺に天狗の面を被せてくれたあなたと、俺は同じ時間を共有している。
同じ時、同じように笑って、今を幸せだと感じている。
過去は途切れてしまったけど。
今は同じ……
同じ気持ちだ。
今から繋げていけばいい。
未来に………
俺達は家族になった。
十年後も、家族でいたい。
今の気持ちを楽しい思い出にして。もう悲しみに染まらないように。
ずっと、ずっと、家族でいたい。
「統帥、から揚げ串買ってきましたよ。食べながら帰りましょう」
「俺がナツキに食べさせてあげるね。はい、あーん♥」
「触るな、愛人。から揚げ串は俺の物だ。俺が統帥に食べさせる」
「お面、取ってくれないかい。食べられないよ」
天狗がまた喋った。
「だーめ」
「意地悪な君だ」
だって。
家族に遠慮は無用だ。
こういうのもアリだろ?
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