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【11/26いい風呂の日SP】君はもう運命の罠にかかっているよ⑤
恥ずかしい。
見ないでくれ。
(俺のお腹……)
俺はΩで。新しい命を宿す事ができる。いつか、ハルオミさんとの子を、この見に身籠るのだろう。きっと……
(でも、今はまだ……)
Ωの生殖機能を受け止めきれなくて。
もしかして、あなたを期待させてしまった?
ごめんなさい、ハルオミさん。
「私はね」
ザブン
湯が跳ねた。
「君が私との未来をしっかり描いてくれて嬉しいよ」
暖かいのはお風呂のせいじゃない。
ぎゅっと……
あなたの腕が俺を抱きしめる。
心臓の音、あったかいね。
ドクン、ドクン
あなたの心臓の音が聞こえる。
頬っぺたがくっついた左胸から聞こえるよ。
「君が欲しい。君が愛しい。今すぐここで君を犯してしまいたい。抱き殺してしまいたい」
熱い口づけが息を奪った。
「でも君は殺さない。私と共に生涯を歩んでほしいから」
吐息の熱さに、俺の鼓動が跳ねた。
「私を選んでくれてありがとう。ナツキ」
俺もありがとう。
あなたで良かった。運命のαが、あなたで……
「番ってくれて、ありがとう」
「うん」
あなたの微笑みは心音まで暖めてくれる。
ピチャン、ピチュン
それは天井から湯船に落ちた雫の音なのかな。
それとも、俺達ふたりが奏でている音なのかな。
長い長い口づけでお互いの体の芯まで暖め合った後、こつん。
おでことおでこをくっつけた。
「君が私に預けてくれた生涯だ。一生をかけて君を守るよ」
「じゃあ、俺は一生をかけてハルオミさんを幸せにする」
「そうか。では、お互いの約束を守れるか、一生をかけて見極めよう」
家族に正解はないんだ。きっと。
俺はハルオミさんを選び、ハルオミさんは俺を選んでくれた。
俺達は家族になった。
他人同士が家族になるって、時に難しいって感じる事もあるけれど。
でも。
(あなたという家族を守りたい)
最愛のあなたを幸せにしたい。
もしも将来、俺達に家族が増えたら……
その子には、俺達の家族に生まれて良かった……って。
そう思ってほしいな。
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