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遥と叶多

いつからかはハッキリ覚えてない。でも、確か小五あたりだった気はする。 遥は突然、俺を『キャラ作り』し始めたんだ。 苛められてただけあって、元々オレはそんなに明るい性格では無かった。けど、よく笑う奴だったとは思う。なんだかもう自分でも本当の俺が曖昧だ。 でも、それは確か。小学校低学年の時の先生が書いてくれた「いつもニコニコしていて穏やかで優しい叶多くん」の連絡帳と、サクが証人だ。 少なくとも「なにあれ暗~い」と揶揄される根暗な奴では無かった。友達もそれなりに居て、運動神経が皆無だろうが外で遊んでもいた。 なのに。 そう、本当に突然だった。 どこから調達して来たのか、前触れもなく仰々しい黒縁メガネを遥から渡され「今日からコレかけろ」と言われたんだ。そして、絵に描いたように陰気なガリ勉になれとも。 意味が分からず、もちろん最初は拒否した。「なんで?俺、目悪くないし」「イヤだよ、勉強キライ」とか何とか反論した。いや反論ってーか、当たり前。 でも、そうしたら遥は物凄く機嫌が悪くなった。お日様みたいな温かい目が極寒になった。今まで見たことのない兄貴の急激な変化に、俺はビビった。…うん、超怖かった。 だから「わかった」って首肯するしかなくて、それから俺はイメチェンデビューした。悪い方向に。 クラスメイトには吃驚され先生には悩みがあるのかと心配されサクには「どうしてそうなった…」と唖然とされた。気持ちの良いくらいの大きな反応に俺は泣きたくなった。 そうして友達とも疎遠になり、俺は暗い青春を送る羽目になったのだ。 遥だけが、満足そうだった。

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