6 / 74

キス魔

不本意ながら、色々と敗北した俺は勉強を教え始めた。 と言っても、遥は本来バカじゃないので理解も早い。だったら始めっから授業ちゃんと聞いとけ。 「あ…オイ、遥」 ふと気付いて傍の顔に声をかける。 頭を上げた遥の唇は、やっぱり少し切れていた。血も滲んでいる。指摘すると端正な顔は「あー」と自分の指で触り確認した。 「待ってろ、今ティッシュ持って、」 そう立ち上がりかけた俺の手首が捕まれる。 「え」とそっちに視線を移すと、遥がニッコリと笑って血の付着した指を差し出して来た。…嫌な予感。 「舐めてよ、叶多」 パードゥン? 思わず脳内がイングリッシュになる。そのくらい意味不明だった。 なにコイツ。なに言ってんだ?

ともだちにシェアしよう!